鈴(リン)と鈴(スズ)
フローラの城のテラスに繋げておいたロープが鈴を誘導する。鈴はただ、ロープにつかまっているだけで良かった。
―――助けに行くだなんて、まどろっこしい。
鈴は視界に現れては消えていく木々を潜り抜けながら思った。
―――みんな殺せばイイジャナイカ。
驚くべき速さで移動していたため、フローラの城は目の前だった。鈴はロープを結んでいたテラスに降り立つと、指を鳴らして作ったロープを消滅させる。
「な、何者だ?!」
物音に気付いた兵士が鈴の元へとやって来る。
「さて、と……。殺人パーティーの続きをしようか」
鈴はにやりと冷たく恐ろしい笑みを浮かべて言った。
その瞬間、鈴が容赦なくツーハンデッドソードを振り上げる。気のせいか、普段より剣を振るうスピードが速い。
「何だこのガキ?! つ、強い……!! 誰か来てくれ!!」
怯えながら兵士は攻撃をかわし、剣を横に薙ぎ払った。鈴はわざと体制を崩してそれを避ける。応援に駆け付けた兵士の剣が鈴の頬をかすった。
「……これだけ? もっと頑張ってよ、兵士さん」
「――――っ?! こいつ、狂ってやがる!!」
「アハハッ、理性なんて無くてもいいじゃないか。あったとしても、虚しいだけだよ」
それと同時に鈍い音が発せられた。
「………何だ?」
兵士は音が発せられたところを恐る恐る見やる。そこには、赤い染みができていた。それは徐々に広がって行く。兵士はどさりと倒れ、二度と動かなくなった。
「しっかりしろっ、おい!? くそっ、このガキめ!!」
もう一人の兵士が鈴に向かって走る。
「無様だね」
殺シタイ殺シタイ殺シタイ、殺シタクテ仕方ガナイ。
コイツラハ僕ノ敵ダ。敵ハ殺サナケレバナラナイ。
「僕に頼らなければ生きていけないだなんて」
辺り一面は血の海になった。鈴はつまらなさそうにそれを眺めた後、その場を後にした。
”無様ダネ、鈴”