表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
外の世界  作者:
外の世界
56/75

砕けたもの

シュンエイがいたことを思い出しました。すっかり忘れ―――いえ、何でもありません(^_^;)


 「玲……」


 フローラが去ってから二時間は経過している。鈴は糸の切れた人形のように、ただ呆然としていた。傍らには、どうでもいいと言いたげに剣が投げ捨ててある。


 ゼロがアリスとフリードリヒに「もう大丈夫だ」と声をかけ、任務終了を告げた。影のように存在感が薄かったシュンエイはそれを遠くから眺めている。


 残ったのは、喪失感だけだった。何の報いもない。


 夢であればいい。これがただの白昼夢なら、夢見が悪かったと言って笑い飛ばすことができる。けれどこれは夢ではなかった。全て現実にあったこと。





 メグリヤが死んだ。





 その事実は僕に耐えられるものではなかった。『死んだ』? いや違う、そうじゃない。





 メグリヤは殺された。僕がこの手で殺したからだ。





 その事実が耐えられるものでなくても、僕は耐えなければならない。彼女が命を落としたのは紛れもなく僕の責任だ。


 ここにいる資格なんて無い。彼らと一緒にいることは、もう二度と許されない。僕は悪役を貫き通さなければならない。それが僕に相応しい最期だ。


 もう逃げることはできない。まだ終われない―――。


 

 「クリス」


 レイチェルが僕を呼んだ。合わせる顔なんて無かった。だから彼女がどんな表情をしているのかまったく分からなかった。


 「僕はもう行くよ」彼女の言葉を遮るように僕は言った。


 「光の楽園でまた会おう。君たちにフローラ様を止めることはできないと思うけどね」









 そう言うと、彼は窓から飛び降りた。


 「クリス!!」


 私は追いかけて下を見やる。だが、すでに彼の姿はなかった。


 どうして? なんて訊けなかった。訊いても答えてくれないような気がしたからだ。


 「これからどうするんだ?」シュンエイが尋ねた。


 「鈴を正気に戻してから、アリスたちを安全なところまで送る。首謀者フローラが狙わないと言ったんだ、もう大丈夫だろう」


 ゼロはいつもと変わらない調子だった。シュンエイは呆れたように言う。「アンタは仲間に裏切られても何とも思わないんだな」


 「何も思わないわけではないさ」


 「じゃあ、どうしてそんなに冷静なんだ?」


 「裏切られることに慣れているからな」


 何の感情も込められていない。彼にとって、裏切られるということは重要でも何でもないのだ。もっと言うなら。彼はそれをただの『事実』に過ぎないと思っていた。


 「どのみち、俺たちは玲を助けに行かなければならない。あと、クリスもな」


 「クリス? あいつは裏切り者だろ!?」

 

 鈴はゼロを睨んだ。暗い表情に、瞳だけが輝いていた。


 「俺が――――」


 鈴は急に口をつぐんだ。そして次の瞬間、にやりと笑ったのだ。私は思わず身震いをした。彼は、私の知っている鈴ではないような気がした――――。


 「僕があいつを殺す。あいつを殺してやるよ」



 

 


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ