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外の世界  作者:
外の世界
45/75

『LEC』本社ビル 8F


 「はあっ……はぁっ……!!」


 鈴は肩を上下させていた。重力に任せ、剣を床に突き立てる。


 「くそっ……! どこまで続くんだよ……」


 鈴は階段に表示されているプレートを見て言った。現在地点は八階だ。


 「少し休もう」


 ゼロが提案した。彼はまったく疲れていなさそうだった。反対に、激しく体力を消耗させていたのは玲だ。彼女は肩口の傷を庇って戦っていたので、いつも通りの動きが取れなかったのだ。


 そして、明らかに調子が悪そうなのはクリスだった。彼は途中から剣を使っていない。魔法のみで戦っている。しかも魔物には効きにくい魔法で、だ。


 「本当にどうしたんだよ、クリス兄。あんたらしくないぜ」


 「柄でもないことをしてるってことくらい、僕だって分かっているさ。だけど、僕は」


 クリスはそこで口を閉ざしてしまった。彼は頭を抱え、その場に倒れてしまったのだ。


 「クリス?!」


 レイチェルが駆け寄った。彼女は看護婦だった。


 「僕のことは、気にしなくていい……」


 クリスは薄く笑った。彼にしては珍しく、歯切れの悪い物言いだった。


 「君たちは気にせず行くんだ。後で追いかけて行くよ」


 「けど」メグリヤは反論しようとしたが、クリスに止められてしまった。


 「足手まといは必要ない。それが戦争だ」

 

 クリスは遠い目をして語った。


 「僕たちは戦争をしている。戦争ではたくさんの人が死ぬ、国にとって重要なのはそれだけだ。誰が、どのような死に方をしたかなんて国には関係ない。彼らは自分にとって有益になることしかしないんだ」


 早く行け、と指示をする。


 「手遅れになる前に」










 ごめんね、メグリヤ。どうやら僕は、最後まで君の味方にはなれないらしい。


 絶望から逃げて逃げて逃げた先にあったもの。それはただの無力感だった。逃げることしかしない者に希望は見えない。


 僕は偽りの光を見つけ、偽りの自分を繕った。その結果がこれだ。


 「また後で会おう」ゼロは渋る鈴たちを連れて階段を駆け上って行った。


 「ああ。またな」


 さようなら、僕の大切な人たち。


 次に会うときは――――。

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