『LEC』本社ビル 2F
「いたぞっ、侵入者だ!!」
「はんっ、たったの八人じゃねえか!!」
LEC本社ビル二階。警報が鳴り響いている。人間に扮したウェンクドリアンたちは、突然の侵入者に慌てふためいていた。
「遅えっつーの!!」
金髪の少年はにやりと不敵に笑う。彼は、自分の身長の倍はあるだろうウェンクドリアンの頭を剣でかち割った。
彼の後ろでは、同じく金髪の少女が剣を振るっている。少女は一寸の狂いもなくウェンクドリアンたちを薙ぎ払って行く。
「玲っ、鈴! 頭下げてっ!!」
声と共に、双子の頭上をかすめて行ったのはクリスの剣―――デュランダル―――だった。獲物を捉えたデュランダルは刀身を真っ赤に染める。
「………」
クリスは自らの剣に視線を落とした。明らかに切れ味が悪くなっていた。
光属性の力を失えば、聖剣は扱えなくなる。僕はいつまでこの剣を握ることができるのだろう。
その時、誰かと背中越しにぶつかった。それはゼロだった。
「クリス」
彼は数匹のウェンクドリアンと対峙しながら、クリスに話しかけた。
「心配するなよ。自分のことは自分でなんとかできる」
「兄さん……?」
「俺たちのことは気にしなくていい、お前はお前が正しいと思う道を進め」
「まさか、知っていて―――」
僕に裏切られようとしているのか。
「おっと、話過ぎたようだ。あいつら、どんどん増えてきやがる」
ゼロはフッと笑って、その場を離れた。
「兄さん………」
クリスは強く剣を握りしめた。そうしなければ、ここで立ち止まってしまいそうな気がした。
「僕? 君が逃げないように見張っているんだよ。まったく、フローラ様も嫌な仕事ばかり押し付けるんだから。……それにしても、『逃げる』ってのはとても響きが悪い言葉だよね。僕だったらそんな言葉、使わないな」
「逃げないわ。私は逃げない」
あの日メグリヤが言ったことを覚えている。彼女は自分の人生を悲観し、放棄しなかった。彼女は最後まで逃げなかった。
逃げたら駄目だ、と僕は思った。『逃げる』というのは響きの悪い言葉だと言ったのは僕自身じゃないか。これは現実なんだ、夢なんかじゃない。
はっきりと見決めなければならないんだ。本当に大切なものは何なのかを―――。