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外の世界  作者:
外の世界
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クリスチアナの過去

 玲はがくりと膝をついた。

 

 「玲っ!」メグリヤは玲に駆け寄り、すぐに手当てを始めた。


 「ごめんなさい、玲。本当は魔法で治してあげたいのだけれど……」


 メグリヤはクリスをちらりと見て、困ったような表情を浮かべた。クリスは難しい顔をしたまま玲に言った。


 「この先、怪我をすることも多くなる。それくらいの怪我で動けなくなるようなら、今すぐイハウェル王国に帰った方がいい」


 すると鈴はキッとクリスを睨んだ。


 「何だよ、クリス兄っ!! そんな言い方ないだろ?! 大体、クリス兄があいつを仕向けたから玲が傷ついたんだ!!」


 「……はっきり言っておくけどね、鈴。あいつは弱かったんだ。僕にとってあいつは塵のような存在だった。あいつの周りにいる奴らは空気みたいな存在だった。倒すのが難しかったから、仕方なく殺したんだよ。殺すことより倒すことの方が難しい。そのことは、君たちが一番よく知っているだろう?」

 

 クリスは無表情のまま言った。彼がにこにこしているところしか見たことがない鈴にとって、この時が何よりも恐ろしかった。


 「殺すことより倒すことの方が難しい、僕はそのことをずっと前から知っていた。僕が他の人よりも強いってこともね。だから力に溺れないように努力していた―――」














 軽く剣を振るうだけで消えていく命。ああ、何て脆いんだろう。


 何てつまらない、何てくだらない『モノ』たちなんだ。


 「ば、化け物めっ!!」


 「………」


 僕が化け物だというのなら、僕を死に追いやる奴は何と言うのだろう。―――死に追いやられたことがないから分からないや。


 「別に、化け物でもいいよ」


 神様、もしあなたがいるのならどうして僕を助けてくれないのですか?


 神様、もしあなたがいるのならどうか僕を殺してください。


 有りもしない神に僕は縋る。


 偽りの女神は僕に囁く。


 「わしがお主の神になってやろう」


 危険だ、惑わされてはいけない。僕の中で警報が鳴り響いた。けれど僕は無視をする。掴めなかった光を逃さぬために。


 「フローラ様……」


 全てを蔑み、憎み、哀れんだ僕に待ち受けていたのは『狂気』。


 有りもしない神に縋った僕は神の加護を手に入れた。


 偽りの女神に縋った僕に押された烙印は、闇属性能力者ミダという名の『闇に溺れし者』。


 闇の女神に嫌われた者が『闇属性能力者ミダ』となる。


 誰が僕を殺してくれるの?

 

 誰も僕を殺してはくれなかった。

 

 怪我くらいさせてよ、つまんないからさ。


 かすり傷一つさえ作れないなんて、僕は本当に不運な奴だ―――。


 








 「だけど結局、僕は力に溺れてしまった。堕ちるところまで堕ちてしまったんだ。……前に、僕は多属性能力者スメユヒだって言ったよね? 本当は違うんだよ。僕は元々、無属性能力者ノーマルだった。だからこそ、君たちが闇属性能力者ミダじゃないと分かった時、嬉しかった」


 神を信じなくなれば光属性の力は消える。けれども、一度押された烙印は消えることがない。


 「君たちに、僕みたいになってほしくなかった。『怪我なんかしない、怪我をしても何とかなる、きっと自分を倒せる奴なんていない』。そんな風に思ってほしくなかったんだ……」


 誰にでも優しいとか、平等だとか、そんなの嘘に決まっている。ただ善い人のフリをしていたいだけだ。


 醜い自分に気付きたくなくて、「これが本当のお前だ」と言われたくなくて、ただただ善い人のフリをする。


 それこそが醜いのだと気付かずに。


 








 「クリス兄が昔大変だったってことも、俺たちのためを思ってキビシイことを言ってくれたんだってことも分かってる。だけど……」


 鈴は顔を上げてクリスに視線を合わせた。


 「玲は、大事な『家族』なんだっ! 心配……するに決まってる……」

 

 「鈴……」玲はメグリヤから離れると、鈴に駆け寄った。


 「大丈夫よ、鈴。私は大丈夫。だから、クリス兄と仲直りしよう?」


 「う、うん……。ごめんな、クリス兄」


 「僕も、言いすぎた。ごめん……」


 そして二人は同時に不敵の笑みを浮かべて「行くぜ、ウェンクドリアンのアジトに!」と言い、走って行った。


 「まったく、あの二人は……」レイチェルは溜息をついて言う。


 「似た者同士ね」

 

 鈴はそう言うと、先を走る二人について行った。


 「アリス様、お怪我はありませんか?」


 フリードリヒが尋ねると、アリスは迷惑そうに手を振り「あるわけないでしょ」と言った。


 「俺たちも行くぞ」


 ゼロに促され、一同は火焔山の頂上を目指して歩き始めた―――。




 

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