ウェンクドリアン ~魔術編2~
中々話が進まなくてスミマセン……(ーー;)
頑張ります。
双子がようやく魔法エネルギーを出せるようになった時だった。
「おんどれは、わしの縄張りで何をしとるんじゃあっ!!」
右目に古傷を負った老齢のウェンクドリアン率いる群れが、草むらから飛び出してきた。
老ウェンクドリアンの後ろにいる若いウェンクドリアンたちが一斉に魔法弾を放ってくる。
「うぉ?!」
鈴は驚き飛び退いた。鈴へと向けられた魔法弾は彼が元いた場所に襲いかかる。一方玲は、冷静に魔法弾を剣で弾き返していた。
「さっそく実験台がやって来てくれたようだね!」
いつの間にか騒ぎに駆けつけてきたクリスが楽しそうに言った。
「何だと?!」
激情したウェンクドリアンがクリス目掛けて攻撃してくる。彼は面倒臭そうに攻撃をかわし、デュランダルを鞘から引き抜いた。
「僕はそこら辺の雑魚を倒しておくから、二人は協力してあのじいさんを倒してね」
そう言って、彼はウェンクドリアンの群れに向き直る。その目は笑っていなかった。
「本当は止めを刺したくなかったんだけど」
剣を振るうたび、ウェンクドリアンの山ができる。
「今日は仕方なかったんだ。……ごめんね?」
クリスはそれを苦々しく思っていた。
玲と鈴は年老いたウェンクドリアンと対峙していた。周辺には、クリスが倒していったウェンクドリアンの屍が転がっている。
「奴め、よくもわしの仲間を無残に殺してくれたな」
老ウェンクドリアンは玲と鈴を一瞥し、フンと鼻を鳴らした。
「あ奴は相当な手練じゃが、お主らはどうじゃろうな。魔法を使い始めて間もないといったところか」
―――協力してこいつを倒せ、だって? クリス兄も無茶を言う……。
鈴はごくりと息を飲んだ。隣にいる玲を見やる。彼女もまた、初めての実戦に緊張しているように見えた。
「何をぐずぐずしておる! 来ぬのなら、わしから行くぞ!!」
老ウェンクドリアンはそう言って、杖から火の魔法弾を飛ばす。二人は左右に分かれて攻撃を回避した。
「行くわよ、鈴!」
「おう!」
玲と鈴は左右からウェンクドリアン目掛けて剣を振りおろす。
「甘いな」
そう言ったのは、観戦をしていたゼロだった。
「っ?!」
ウェンクドリアンは素手で二人の剣を掴むと、左足で鈴を蹴り飛ばした。ツーハンデッドソードが鈴の手から落ちる。
「鈴っ!!」玲が叫ぶ。
「よそ見をするとは、愚かなことよ」
「?!」
ウェンクドリアンはツーハンデッドソードを拾い上げると、そのまま玲に斬りかかった。そして、彼女の剣ごと玲を投げ捨てる。地面に落下した彼女の肩口からは血が滲んでいた。
「玲っ!!」
メグリヤが駆け寄る。しかし、クリスはそれを拒んだ。
「どうして?!」
クリスは何とも言えない複雑な表情をした。
「ここで彼女を助けると、彼らは一向に強くなれない」
「ふん。所詮、この程度か」
ウェンクドリアンが足元に倒れる二人を見て嘲笑した、その時。
「待てよ……!」
鈴がウェンクドリアンの右足を掴んだ。
「まだ終わってねえ……。だって俺たちは剣しか使ってないんだぜ!」
「ぐああああっ?!」
ウェンクドリアンは叫び声を上げ、がくりと膝をついた。
「お主っ……何をした?!」
ぎょろりと充血した目が鈴に向けられる。鈴は立ち上がり、服についた汚れを払い落した。
「何って、ただの魔法だよ。捕縛用の魔法だ」
無数の光がウェンクドリアンを拘束している。その光はバチバチと弾け、音を立てながらウェンクドリアンを徐々にきつく縛り上げていった。ウェンクドリアンは呻き声を上げた。
「お主、雷属性能力者かっ……!!」
「ご名答。電属性能力者の補助系だよ。本当はこのまま俺がお前を倒しても良かったんだけど? 残念なことに、剣をお前に取られちまったからな。ここは玲に頑張ってもらうしかないんだ」
鈴の後ろでは、玲が呪文を唱えていた。彼女は顔を上げ、ウェンクドリアンを睨んだ。
「これで終わりよ」
どこからともなく現れた津波が老ウェンクドリアンに襲いかかる。ウェンクドリアンは驚愕に目を見開いたまま波に飲み込まれていった―――。