修行 ~能力者の特性~
「ここから先はウェンクドリアンの群れに遭遇する確率が高い。アリスを狙っている奴らとも必ず出会うだろう。そこで、一つ提案なんだが」
ゼロは俺たちを見て言った。
「修行をしてみないか?」
「修行?」
「そうだ。―――カイを助けた時、お前たちは魔法を使ったことがないと言ったな? あの家にずっといたお前たちには想像がつかないかもしれないが、外の世界はお前たちが思っている以上に危険なんだ。魔法攻撃しか効かない魔物もうようよいる。この際、はっきり言っておこう。今の玲と鈴の実力では、ウェンクドリアンに勝てない。行動自体は単純だが、あいつらはやけにずる賢くて冷静だ。それに対応できるようにしておかなければ殺されるぞ。そうなる前に、実力をつけておくんだ」
そう言って、ゼロは荷物の中からホワイトボードを取りだす。……どうしてそんなところに?
そんな疑問をよそにゼロはホワイトボードを文字で埋めていく。
風属性:風を操る能力
火属性:火を操る能力
水属性:水を操る能力
雷属性:雷を操る能力
闇属性:邪気を撥ね退け、魔剣を操る能力。
光属性:神の加護を受け、聖剣を操る能力。
無属性:突出した能力がない状態
多属性:いくつかの能力を所有している状態。その中の能力には優劣がある。
ホワイトボードには上記のようなことが書かれていた。
「まずは能力の特性を知ることが大切だ。前も言ったように、大半の人間は無属性というものに分類されている。つまり、魔力を持っていないということだな」
「ゼロさんの言うことが本当なら、魔力がないと外を出歩くことができないんじゃないの?」
玲が鋭い発言をした。すると、クリスが彼の説明を補うように言う。
「魔力を持たない人間の大半は、神を敬っているんだ。―――ここに書いてある『光属性』というのは、何も特別な能力じゃない。神を敬うことで神の御加護を頂くんだ。そうすれば、元々素質のない人間でも魔力を手にすることができる」
クリスは光属性と書かれているところに『神を信じている者のみの力』と付け足した。
「どんな形であれ、こういった能力を持つ者たちのことを能力者という」
ゼロはホワイトボードに書いた事柄を消し、新たにこう書きこんだ。
能力者:何らかの属性を持つ者のこと
ハピタ:風属性を持つ者のこと
ラルス:火属性を持つ者のこと
ウォブ:水属性を持つ者のこと
ファキイ:雷属性を持つ者のこと
ミダ:闇属性を持つ者のこと
ラゴット:光属性を持つ者のこと
ノーマル:無属性を持つ者のこと
スメユヒ:多属性を持つ者のこと
「能力はこうやって分類されているんだ。だが、この中からさらに振り分けられる事項がある」
「え、まだあるの?」
「ああ。例えば俺は雷属性と闇属性を所有する多属性能力者だが―――」
ゼロが剣を―――ダーインスレイヴを―――強く握る。すると、そこからバチバチと静電気が発生した。彼が剣を振り上げると、剣先に光が集まり、その光は空へと続いて行く。光は空に消えていったように思えた。しかし、数秒後。目を開けていられないような、巨大な雷が空から降ってきたのだ。
「ちょっと、危ないじゃないゼロ!!」
レイチェルが抗議する。しかし、ゼロはそれを無視して話を続けた。
「―――このように、雷の攻撃を繰り出すことができる。多属性能力者の特性を細かく分けるとするならば、攻撃系の能力が『優性』ということになるんだ」
鈴は混乱した。何が何だかいまいちよく分からない。「もっと簡単に説明してよ、ゼロさん」
「つまりだな。多属性能力者は複数の能力を所有しているんだが、それらの能力には優劣―――簡単に言うと、優先順位だな―――があるんだ。攻撃系の能力が『優性』となり、それ以外の特性を持つ能力が『劣性』となる」
「何だよ、その攻撃? 系って……」
「それについては後で説明する。とりあえず、修行を開始しよう。まずは剣術からだ」




