表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
外の世界  作者:
外の世界
29/75

能力


 「さっさと抜けると言っても、この街は案外広いんだぞ」


 ゼロはため息交じりに言った。「火焔山に着く頃には日が暮れるだろうな」


 とにかく小さい手乗りワニ族だが、与えられている住居は人間のものと同じ大きさのものだ。いつか手乗りワニ族と人間が仲良くできるように、とイハウェル王が配慮した結果だ。


 「あ、あの……」


 フリードリヒがおずおずと声をかけてきた。


 「アリス様がお疲れのご様子です。どこか休める場所はありますでしょうか……?」


 「住居以外はクロゥテルに合わせた大きさになっているから、休めるところと言ったら宿しかないんじゃない?」


 「寝ている間に殺される、なんてことにならないでしょうか?」


 アリスは身震いをした。その時、悲鳴が上がった。一斉に声がした方角を見る。


 「あっ、あそこ!」


 メグリヤが真っ先に駆けだした。クロゥテルが街の外れにある、流れの速い川で溺れていた。いくらワニの仲間とはいえ、小さなクロゥテルが荒れた川を泳げるはずがない。


 「助けてあげなくちゃ!!」


 しかし、川に飛び込もうとするメグリヤをレイチェルは引きとめた。


 「無理よっ、だってあんなに流れが速いんだもの! こっちまで流されちゃうわ!」


 「じゃあどうすればいいの?!」


 「『ウォブ』がいたら何とかなるかもしれない」


 「『ウォブ』って何?」玲が尋ねる。


 「この世界では数多のエネルギーが存在する。例えば、土に植物の種を埋めるとするだろう? 何日かすると植物は芽生える。生きるのに必要な条件―――日光と水分、養分―――が揃ったからだ。簡単に言うとするなら、そうだな、その植物はエネルギーを得たからこそ発芽することができたんだ。そういうエネルギーを生み出す―――もしくは操る―――ことができる者を『能力者』という。その中でも、水を操れる者のことを水属性能力者ウォブと言うんだ」


 そう言った後、ゼロは仲間を見渡した。


 「誰でもいい、ウォブはいるか?」


 レイチェルは悔しそうに首を横に振る。


 「私は無理よ。だって、無属性ノーマルだもん」


 無属性ノーマルとは、突出した能力のない者のことを指す言葉だ。大抵の人間は無属性ノーマルに該当する。


 「メグリヤは?」


 「ごめんなさい。私は火属性能力者ラルスなの」


 「僕は多属性能力者スメユヒだけど、残念ながら水属性能力者ウォブではないよ」


 クリスはゼロに聞かれる前に言った。


 ゼロはクリスと同じ多属性能力者スメユヒだが、彼もまた水属性能力者ウォブではない。残るは玲と鈴だった。二人は否定するように首を横に振る。


 「僕らは能力とか、能力者のことについて何も知らないんだ。自分の能力が何かも分からないよ、悪いけど」


 「心配するな。それならすぐに調べることができる。レイチェル」


 ゼロはレイチェルからあるものを受け取った。三センチ程度の薄い紙である。


 「これは?」


 「持っている能力を最大限に生かすための道具だ。ただし、魔力が強い者や優れた能力者が使っても効果は発揮しないがな。時間がない、一か八かでやってみろ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ