双子の喧嘩
クリスが双子を見守る『保護者』のような存在になりつつある気がするのは私だけでしょうか……(^_^;)?
「エラルド街に何の問題が?」
純粋にメグリヤが尋ねる。
「エラルド街は光の楽園に近いところにあるでしょう? だから、自然とエラルド街の男は頻繁に兵に出されていたのよね。そんな時、死に至ると言われていた病が流行したものだから……。とにかく、人口がホントに少ない街なの。だからあんまり行きたくないっていうか……。本当に、あそこを通るのは危険なのよ」
「だけど、その流行は数年前に静まったって聞いたわ。エラルド街に行ったことがないから本当かどうかは分からないけど」
「えっと、そうじゃないのよ。流行病が原因というわけではないの。何て言えばいいかしら……。品性のかけらもない連中がうようよしているところ……って感じ」
レイチェルは適当な言葉が見つからないらしく、口ごもる。その時、それまで静かに話を聞いていた鈴が「ナルホド」と納得する素振りを見せた。
「要するに、一歩でも街を歩く奴はヤロウに襲われ―――」
鈴が言いかけ、メグリヤが赤面したちょうどその時だった。ブスッと地面に何かが突き刺さる。一体何が……?
「どこでそんな言葉を覚えて来たのかな、鈴?」
玲が危険なオーラを発していた。笑っているが、顔は引きつっている。完全にキレた印だ。彼女は愛用のスクラマサクスを怒りに任せて地面に突き立てたのだ。その切っ先が鈴に向いてなかったことだけが救いだった。
「今すぐ答えなさい。さもないと、二度と陽の目を拝めなくさせてやるわよ?」
「なっ、何だよそれ?! 何で玲に言わなきゃなんねーんだよ!! そういうのが、プライバシーの侵害って言うんだぜ?!」
負けじと鈴が言い返す。彼が姉に反論するところを見たことがなかったクリスにとって、これは意外だった。自我が芽生えたんだなぁ……と感動してしまったので、止めるどころではない。
メグリヤはメグリヤで、このようなことは日常茶飯事になってしまっている。自分が撒いた種なのにもかかわらず、優雅に紅茶を飲んでいるという有様だ。「優雅過ぎるだろ!」と誰かがツッコんでもおかしくないのに、残念なことに当のツッコミ役は喧嘩中である。
「平和だわ」
「そういう意味で言ったわけじゃなかったのだけれど。まあ、二人が喧嘩しているのを見ると、平和ってこんなに身近にあるんだなって実感できるわね」