始動
メグリヤに連れられて来たのは玲と鈴だった。
あの事件から二年。久しぶりに再会した彼らはあの時よりもやや大人びて見えた。
「クリス兄っ!」
鈴がクリスの元に駆け寄る。
「いつからここに来ていたの?」
「今朝、かな」
「来るなら来るって言ってよね。俺たち、クリス兄が来るの楽しみにしてたんだからさ」
なあ? と鈴は玲に話を振った。
「そうね」
玲は相変わらず澄ましている。だが、彼女は微笑んでいた。
クリスは心の底からほっと安心する。二年前の彼らの面影は、見当たらなかった。
「あれ? クリス兄、その人たちは誰?」
「もしかして、初対面なのかい? 今メグリヤと話をしているのがゼロ。僕の兄さんだ。で、彼女がレイチェル。二人とも良い人だよ」
「ふうん。ゼロとレイチェル、か」
「鈴。年上の人に対して呼び捨ては駄目よ」
玲は鈴をたしなめる。「だって」と鈴は困った顔をした。
「クリスは『クリス兄』、メグリヤは『メグ姉』だろ。俺らの恩人だしな。だけど、ゼロとレイチェルはどう呼べばいいか分からないよ」
クリスは鈴の口調が二年前と違うことに気付いた。だが、ところどころ懐かしい口調も出てくる。
イハウェル王国で施された治療により玲と鈴―――彼らは双子である―――は、徐々に健康な身体を取り戻しつつある。長年成長が止まっていたせいで身長や体重、体力などが年齢相当ではないと医師に宣言されたが。
玲が笑うようになったり鈴が生意気になってきているのは、彼らがちゃんと成長している証だとクリスは思っていた。
彼らは、人として成長しているのだ。決して『人形』なんかじゃない。
「そういう時は、『さん』を付けて呼べばいいのよ」玲が言う。
「ゼロさんとレイチェルさん、か」
そこで、鈴はにやりと笑って言った。
「悪くないね」
「顔を上げよ」
冷たく鋭い声が王室に響き渡った。
「お主に応えてもらわねばならぬことがある」
光の楽園の王女、フローラの眼下にいるのは一人の兵士だ。
「お主は真に我が国の味方なのであろうな?」
兵士は顔を上げないまま答えた。
「もちろんでございます、フローラ様」
「クリス兄?」
はっと顔を上げると、そこには鈴がいた。心配そうに顔を覗きこんでいる。
「クリス兄、大丈夫なの? 顔色悪いよ」
「……大丈夫だよ。それより、鈴」
「?」
「口調、元に戻ってる」
鈴ははっとして、手で口を塞いだ。
「も、戻ってない!! クリス兄の勘違いなんじゃないの?!」
「あははっ、面白いね」
「面白くない!! フユカイだっ!」
「ねえねえ、何話してるの~?」
レイチェルがやって来る。クリスが鈴で遊んでいるのを見て、おもしろそうだと思ったようだ。
―――からかわれ過ぎて鈴が涙ぐんできた頃。ゼロが助け舟を出した。
「お前たちに客が来たみたいだぞ。相談したいことがあるらしい」