再会と再開
第一章 イハウェル王国
現在の時刻は午後三時。巡矢恵―――メグリヤと呼ばれている―――は人数分の紅茶をお盆に載せ、イハウェル王国の中庭に向かった。そこにはすでに彼女の仲間が集っている。
『光の楽園』兵士であり、メグリヤの恋人でもあるクリスチアナ・ブランフォードは彼女に気付くと、微笑んでみせた。
「やあ、メグリヤ。久しぶりだね」
クリスチアナ―――クリスは、いつもメグリヤと行動を共にしているわけではない。表面上で仕えている光の楽園に滞在していることが多いのだ。光の楽園を偵察している、という言葉がぴったりと当てはまるだろう。
イハウェル王国の正式な薬剤師となった彼女は、クリスと逢える機会がとても少なくなってしまった。彼と顔を合わせたのは二年ぶりである。
「会いたかったわ、クリス」
「僕もだよ、メグリヤ」
クリスはメグリヤの手を取り、キスをした。
「ところで、彼らはどこに行ってしまったんだい?」
「彼ら?」
メグリヤは不思議そうに首を傾げた後、「ああ、それならまだ城の中にいるんじゃないかしら」と言った。メグリヤは彼らを探しに行くと言い残し、城へと戻っていく。
クリスは銀髪で細身の男に声をかけていた。
「お久しぶりですね。兄さん」
クリスがゼロ・ブランフォードを兄だと知ったのは、彼がまだ十六の時だった。あの頃は自分も相当荒んでいて、周りを困らせていた。―――実際には、『困らせる』という言葉だけでは足りていないのだが。
「兄さんにとって、この国はどんな感じなんですか? 僕はあまり訪れることができないので……」
「悪くないな。数年前よりは随分良くなったよ」
そこへ、レイチェル・デスぺラードが顔を出した。「ゼロの口数も、数年前よりは多くなったわよ。そう思わない? クリス」
「ええ、そうですね」
レイチェルは不満そうに頬を膨らませる。
「もっと砕けた喋り方でいいのよ。私、堅っ苦しいのは苦手なの」
「おかげで俺は大迷惑だ」
「何よ、ゼロのばかっ」
そう言いあう二人はとても楽しそうに見えた。ちょうどその時、メグリヤが『彼ら』を連れてきたのがクリスの視界に入った。クリスは『彼ら』にも挨拶をする。
「こんにちは。玲、鈴」