似てない双子(ニテナイ フタゴ)2
博士はいつもそうだ。外、外、外。
うるさい。どうでもいい。そんなこと、言われなくても分かっている。僕は外になんか憧れていない。それなのに博士は言うんだ、まるで呪文のように、それを言わなければ全てが終わってしまうとでも言うかのように。
僕は、博士が嫌いだ。
「どうして?」
気がつくと、そこには玲がいた。
「どうして、博士を悪く言うの?」
玲は僕の気持ちを見透かしているようだった。彼女は冷たい目をしていた。
僕には彼女の考えていることが理解できない。
外に憧れているのは僕ではなく彼女だ。外に出ることを許さない博士はまさしく彼女の敵だった。それなのに、彼女は博士を庇う。
「ごめん、玲」
僕には君のことを理解できないよ。
「ごめん」
「もういいよ、鈴。気にしてない」
彼女はこちらに向いていたが、僕を見ているわけではなかった。玲の目に映るのは、一体何なのか。それを知る術を、僕は知らない―――。
「お前はそれでいいのか?」
キリエさんは訝しげに尋ねた。キリエさんは元からここにいた人間ではないらしい。だが、彼女から外のことについて聞いたことはないし、僕だって聞くつもりはない。
僕が何も言わずにいると、キリエさんは再び訊いた。「あの子は、このままでいいと思っているのか?」
「……知らないよ、そんなこと。僕に聞かないで」
似てない双子。それが僕たちだった。双子だから性格も同じだろうと決めつける人は多いが、僕たちの場合は違う。外見は似ているけど、性格は全く違う。
キリエさんがここではどういった存在なのか、未だに分からない。何かしてくれるわけでもなく、ただそこにいるだけだ。彼女がどうしてここにいるのか、きっと博士しか知らない。
「あの子は何を思っているのだろうね」
「それは僕が聞きたいよ」
すると、キリエさんは肩を竦めて「まあ、どうでもいいけどね」と言った。