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外の世界  作者:
無限ホール
15/75

狂った世界(クルッタ セカイ)6


 「博士」

 博士は自分を呼ぶ声を聞いた気がして振り返った。しかし、そこには誰もいない。

 「こっちですよ、博士」

 はっと気づくと、自分の背後に鈴がいる。

 鈴はにこっと笑って言った。目が笑っていない。「実は、博士に用があって」

 「用?」

 「ええ。とっても大事な用事です」

 鈴はそう言うと、先を歩いて行ってしまう。自然と、博士は彼を追いかけることになってしまった。彼は一体どこに行こうと、そして自分に何の用があるのだろうと博士は思った。彼が自分に声をかけたのは初めてなのだ。

 「どこに行くつもりだ?」

 すると、鈴はアハハっと乾いた笑い声を上げた。

 「さあ、どこでしょうね」

 「ふざけるのは大概にしろ。私には暇がないんだ」

 「暇? 暇がないのはボクも同じです。ボクには時間がない」

 「何を言っているんだ。お前にとって時間は有り余るほどあるだろう」

 「いいえ、無いんですよ。―――あ、到着しました」

 そこは食堂だった。三日月が室内を照らす。

 なぜここに来なければならないのか分からない博士を置いて、鈴は食堂の窓を開け始めた。室内の淀んだ空気が一掃される。

 「博士」

 鈴が再び呼んだ。

 「ここで、死んでください」









 僕は博士の首を目掛けてナイフを突き立てた。だが、博士が腕で庇ったせいでとどめを刺すことはできなかった。博士はがくっと膝をつく。

 「何のつもりだ」

 博士はギョロリと僕を睨んだ。

 「なぜこんなことをした。こんなもので私を殺せると思ったのか?」

 「思いましたね」

 「お前の目的は何だ?」

 「目的?」

 一瞬、博士の言う言葉の意味が解らなかった。目的? そんなことに拘ってどうするんだ。所詮、博士も人間ダネ。

 「殺したかったから」

 僕ハ悩ンダ挙句、思ッタコトヲ言ッタ。

 「生きているから殺す。そこにいるから殺す。それじゃ駄目? それとも、小説に出てくる殺人犯みたいな言い訳をした方がいい? 誰かを助けてあげたいだとか、他に手は無かっただとか……。そういう理由らしい理由って、必要なのかな」

 「どうだろうな」

 「……強がるフリはやめた方が身のためだよ」

 そう言って、僕は博士の足にナイフを突き立てる。博士は苦悶の表情を浮かべた。僕は当たり前な疑問を口にする。

 「どうして逃げないの?」

 怪我をしたのは腕なんだから、逃げることは可能だったはずだ。

 「答えてよ、博士」 

 博士の身体は真っ赤に染まっていく。床にだらだらと赤いものが流れていく。それでも博士は助けを呼ぼうとはしなかった。

 「僕は虐めるの、好きじゃないんだよね」

 ナイフで同じ箇所を再び刺す。刺して、抜いて、刺して、抜いて。僕はそれを繰り返した。その時、何かが切れるような変な音がした。博士は絶叫する。アキレス腱が切れたらしい。ついに博士は、本当に逃げることができなくなった。

 博士は止めてくれと懇願した。僕はそれでも止めなかった。頼み事なんて、彼らしくもない。

 「アハハッ、無様ダネ」

 人間ハ簡単ニ壊レテシマウンダカラ。

 「ドウシテ逃ゲナカッタノ?」

 動かなくなった博士に僕ハ尋ネタ。

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