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外の世界  作者:
無限ホール
13/75

ほのぼの(?)

ちょっとほのぼのとした感じにしてみました。


 博士が僕の前を歩く。階段を登る音が響いた。それ以外に音はない。会話はない。

 僕はポケットに手を突っ込み、ナイフをもて遊んでいた。人を殺すということ自体は恐くなかったが、この静けさは少し不気味だと思った。

 ついに書斎にたどり着いた。博士が扉を開ける。初めて書斎に足を踏み入れたが、この家の廊下のように、そこは殺風景だった。何も飾られていない。

 「ここに座れ」

 博士は視線を椅子へと向けた。僕は素直に博士の指示に従う。アンタハ モウスグ 死ヌンダ。





 「逃げるなんて、どうせ無理だよ」





 「玲……?」

 そこには彼女もいた。そうか、君が博士に告げ口をシタンダネ。

 逃げる? 僕が何から逃げるって言うんだ。

 感情のこもっていない目。僕と同じだ。僕たちが似ていないなんて、嘘だ。ただ一つだけ違うのは、彼女は人殺しではないということ。僕はこれから博士たちを殺すんだから、立派な人殺しだ。

 彼女は相変わらず無表情で、行動も淡々としていた。書斎の扉を音も立てずに閉める。無駄な動きがない、それはまるで―――。





 「さて」





 博士の声は一際大きく響いたような気がした。

 「何か言うことは?」

 博士は人を見下すような口調で話す。それが聞けなくなるなんて、ちょっと寂しいかもね。

 玲がいたのは誤算だったけど、まあいい。次に逢う時には必ず隙ができる。その瞬間を狙えばいいだけの話だ。

 「―――っ?!」

 どうして声が出ない? 言うんだ、言わなきゃ駄目だ! そうしなければ機会を失ってしまう!

 「……約…束を、破ってごめんなさい……」

 自分で言うのも何だけど、正直呆れた。大発見とでも言うべきか。僕には悲しいとも嬉しいとも思ったことはないが、どうやら『恐怖』という感情はあるらしい。

 「他には?」

 はぁ、と思わずため息が出そうになる。そういえば、博士はドSだったっけ。

 それなら僕はこう言えばいいのか? 博士が聞きたいと思っていることを。

 「え? あ、その…え…っと……」

 「他には?」

 「……は、ハカセの言うこと、守ります……」

 「それだけか? 私が散々言ってきたことをお前は忘れているな」

 まだ何か言わせるつもり? いい加減にしてよ、こっちは好きでやってるわけじゃないんだしさ。

 「ボ、ボクはハカセの……」

 ……うわぁ、何か本当に恥ずかしくなってきたんですけど。しかも何? 玲がずっとこっち見てるし! こ、これ以上言いたくない……。

 「何だって?」

 「……ぐすっ。一生、ハカセのもの…です……」

 ううっ、早く博士を殺してやりたい………。っていうか玲、どうしてそんなに嬉々とした笑顔浮かべているのさ。



 




 


 はぁ、と思わずため息が出る。

 「約束を破ってごめんなさい……」

 「他には?」

 「え? あ、その…え…っと……」

 本当ホント、見てられないな。話があるからやって来たってのに、いきなり修羅場(?)っぽいし? 何をやっているんだあの博士は。

 あいつ、生意気なガキだけどさ。だけど、苛めていいってわけないだろ? ……って。あーあ、泣きそうになってんじゃん。僕たちに対しては口が達者だけど、博士には敵わないって感じかな。そろそろ助け舟を入れる頃か? まあ、部外者の僕が口出しするようなことじゃないけどさ。

「それだけか? 私が散々言ってきたことをお前は忘れているな」

 ちょっ、ちょっと待て? この人まさかSじゃないよね……? いや、この天才科学者がそんなわけな―――。

 「ボ、ボクはハカセの……」

 「何だって?」

 「……ぐすっ。一生、ハカセのもの…です……」

 Sだった―――――!!!!! しかもガキに何てこと言わさせるんだよッ!!

 「それ以外は?」

 「……ぇ?」

 「フン、まあいい。約束を破った罰だ、そのまま家の中を一周してこい」

 家の中一周ってアンタ、いったいこの家どんだけ広いと思ってんだよ?! そんなことしてたら日が暮れるわっ!!

 「あ、あの、ハカセ……」

 ここからじゃ中の様子が見えないから分からないけど、多分鈴は内心不安なのだ。その声はとてもおどおどしていた。

 「何だ? 言い訳は許さないぞ」

 「………はい」

 ―――これじゃあ出るに出れないなぁ。仕方ない、話を切り出すのはまた今度にするか。

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