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番外編11.たろう、ないしょの準備


「おはよ——」


 教室に入りみんなに手を振りながら挨拶をして机に座る。


「たろう。あのさぁ」

 ぼくの周りに女の子たちが集まってくる。


「ん——なぁーにぃ?」

 カバンの中から荷物を取り出しながら話を聞く。


「今年のバレンタインの友チョコ交換はどうする?」

「本命に作るのはたろう何がいいと思う?」

「たろう。これは作りやすい?」


 みんなが口々に話す。



 ぼくは立ち上がって、ぱっと両手を広げる。

「みんな待って!1人ずつ!」


 雑誌のチョコレートをみてみる。


「これは作りやすいけど、温度失敗したら終わるから事前に練習必要だよぉ」

「本命に作るんならガトーショコラとかチョコのパウンドケーキとかはおすすめかなぁ」


 テキパキとみんなの質問に答えていく。



 (友チョコ……どうしよう)

 んー。と腕組みをして考える。



 (あゆくんに渡すのと同じにはしたくないな)



「はいっ!」

 手を上げてみんなに宣言する。


「今年の友チョコは学校内でお昼休みにみんなで食べるものにしまぁ——す。お持ち帰りはしませんっ」

 そう宣言した。


「ええ——!たろうの友チョコ楽しみなのに」

「なんで!」


 みんなから詰め寄られる。

 

「ないしょっ!でも今年からはず——っとそうするからねぇ」


 それだけ言って教室を飛び出した。


 廊下から教室の時計をチラッと見る。

 先生が教室に来るまであと10分。


 階段の踊り場でスマホを取り出す。


 ネット画面を開いて、お目当てのものを探す。

 画面をスクロールをし続けたらついに、お目当てのものが見つかった。


 ニンマリとスマホを持って笑う。


 そのままぽちっと注文をした。



 家に帰ってからママに報告する。


「ママ——!明日荷物が届くからよろしくね」

 ママは編み物をしてる手を止めてぼくを見てきた。


「なに、なに。何を頼んだの?」

 興味津々なママの顔。


「あのね……」

 ママに耳打ちをする。


 ママは、編み物をテーブルに置いて、手を口に持ってくる。


「きゃ——素敵!たろちゃんいいわね!それ!」

「いいよねぇ——。たろう頑張る」


 ママと2人でガッツポーズをした。


 階段を上がり部屋に入る。


 カバンを机の左にかけた。

 チリン。

 カバンについてるお守りがなった。


 ぼくはそれを目で眺めながらスマホを手にした。



『あゆく——ん!たろうからのお誘いでぇ——す』


 あゆくんにメールを送る。

 あゆくんのアイコンを見るたびにぼくの心はポカポカになる。


『お誘い?どうしたの?』

 すぐにあゆくんから返事がきた。


『14日はたろうにあゆくんの時間をくださいっ!』


 カレンダーをみてにんまりする。


 今年は平日。


 でも放課後にあゆくんといつもの植物園のあのフリースペースに行けばいい。

 頭の中で計画を立てる。


『14日?分かった』

 あゆくんからそう返事がきた。


 そのあと立て続けにスマホが鳴った。

『咲太郎、ぼくのスケジュールはずっと押さえてるんじゃなかったの?笑』



 (ぴやぁぁあ——!)

 思わずスマホの画面を抱きしめる。



 (あゆくんが、たろうのお胸さんに攻撃してくるぅ)


 

『たろうは、今あゆくんにお胸を撃ち抜かれました……』


『じゃあ咲太郎14日は会えないね。笑』


『今!たろうのお胸さんは回復しましたっ!』


『咲太郎、今日も元気だね。学校はどうだった?』


 あゆくんからのメールは全部ぼくの宝物。

 

 部屋に入ってから立ったままだったことに気がつきベッドに座る。


 そのまま横になりあゆくんに返事を返す。


『今日はね、最後の試験が帰ってきたよぉ。今回たろう結果楽しみだよ』

 あゆくんにそう返した。


 あゆくんが教えてくれたおかげ。


 そのまま静かに目を瞑る。


 あの日。

 保健室に行って良かった。

 ギャルメイクをゆーちゃんに見せに行って良かった。



 スマホを胸にぎゅっと抱きしめる。



 ブブブ。

 スマホが鳴った。


 あゆくんからの返事だ。


 この、何気ないやりとりが楽しい。



 (あっ!)

 起き上がってそのまま階段をダダダと駆け降りる。



「ママ!材料!」

 ママに声をかける。


 そのまま冷蔵庫と戸棚に向かう。


「ママ!卵と牛乳は明日使う?」

 リビングに聞こえるように声をかける。


 パタパタ。


 ママがキッチンに来てくれた。

「明日使う予定だったけど、メニュー変更すればいいわよ。それより生クリームは?」


 2人で顔を見合わせる。


「たろうちょっと買ってくる」

 キッチンを飛び出そうとして、ママに呼び止められた。


「たろちゃん、パパの分も一応作ってあげてね」

 笑いながら言うママ。


「うんっ!パパの分もお友達の分も作るよ」

「それなら安心。練習するんなら少し材料多めに買ってきた方がいいわよ」

「うん。そのつもり」


 今度は階段をタッタッタと上がる。


 制服から私服に着替えてコートを着る。

 そのままお財布とスマホをポケットに入れてまた階段を降りた。


「ママ行ってくるね——」

 玄関で靴を履きながらそう伝えて家を飛び出した。


 そうだ。


『あゆくん。たろうお夕飯の材料足りないからちょっとお買い物行ってくるねぇ』

 スマホをポケットから取り出しそれだけ送る。


 あゆくんどんな顔してくれるかな。


 びっくりするかな?

 驚くかな。


 14日が楽しみだな。

 そんなことを考えながら材料を買いに行く道を歩く。


 (あゆくんに関連するものはぜぇ——んぶ楽しい)


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