第49話:冬斗と冬馬
「「「おはようございまーす!」」」
「おはよう。今日も頑張ってね」
「「「はーい!」」」
民宿西野の門前で、可愛く元気な声が響く。
出迎えるのは、美人女将の風花。
子供たちは元気に答えて、本館の隣に建つ道場へ入っていく。
西野道場。
西野家は民宿の他に、帝国式マーシャルアーツの道場も開いている。
初代師範は、帝国軍所属で森林保護官を務めていた西野風人。
銃を持つ密猟者たちから森の生き物を護り続けていた彼は、武器を持つ相手を素手で制圧する技術に長けていたという。
「我が国の武道が、海を越えて受け継がれていたとは本当に興味深いですね」
「この型は、森林保護官が使う系統をアレンジしているのでしょうか」
セリオスの護衛騎士たちは、任務の合間に道場へとやってくる。
それは、愛歌のように強くなりたいという武人らしい気持ちもあるが、異国に根付いた祖国の武道に対する興味の方が大きかった。
そんな西野道場では、双子の師範代が稽古をつける役割を担っている。
「冬斗どの、お相手願えますかな?」
「勿論です」
騎士の1人が、金髪イケメン師範代・冬斗に話しかける。
冬斗は穏やかな笑みでそれに答えた。
「冬馬どの、是非手合わせを」
「いいですよ」
一方、別の騎士がもう1人の金髪イケメン師範代・冬馬に声をかける。
冬馬も笑顔で快諾した。
……数分後……
どちらの騎士も、道場の畳の上で大の字になって倒れていた。
現役の帝国軍人が、民間人の若者たちに全く勝てない。
彼等の攻撃は全て見切られ、カウンター攻撃で沈められてしまった。
((……西野家は超人集団か……))
大の字になったまま、騎士たちは半目でそんなことを思っていた。
愛歌の強さは、祖先である人工生命体の遺伝子によるもの。
同じ遺伝子をもつ兄たちも強くて不思議ではない。
因みに双子の間では、紫がかった青の瞳をもつ冬馬の方が強かった。
……そんな双子たちも……
「お兄ちゃんたち、手合わせしてくれる?」
「「あ、あぁいいよ」」
愛歌が来て声をかけると、苦笑しつつ答える。
その後、手合わせ開始数秒で、床に転がる双子たちがいた。
「おねーちゃんの勝ちぃ~!」
「愛歌おねーちゃん、つよーい!」
「最強だね!」
そんな師範代たちを見慣れている子供たちは、全く驚きもせずに笑っている。
((……妹に全く勝てないんだが、俺たちの遺伝子どうなってんの……?))
今日も秒で倒された兄たちは、先の騎士たちと同じく床の上で大の字になり、半目で天井を見上げていた。




