第36話:夏祭り
民宿西野がある道北の小さな村。
村の中央にある神社では、毎年8月に夏祭りが開催されている。
「今夜は盆踊りがあるよ。セリオスも行ってみない?」
「いいね。面白そうだ」
桔梗の花が描かれた浴衣姿の愛歌は、紺色の浴衣を着たセリオスを誘い、神社へと向かう。
後ろからついていく護衛騎士たちはアイヌ紋様が入った紺色の法被姿で、背中には【民宿西野】の文字が入っている。
北海道では馴染みの、瓦のない急傾斜の三角屋根をもつ家々。
その玄関前には様々な絵が描かれた提灯が飾られていて、村の中は普段よりも明るく華やかだ。
愛歌とセリオスが手を繋ぎながら夜店を見て歩いていると、向こうから美冬と春樹が歩いてきた。
パステルピンクの生地に白い鈴蘭の花が描かれた浴衣を着た美冬と、黒と灰色の縦縞が入った浴衣を着た春樹。
彼等も手を繋いで歩いていたが、愛歌たちに気付くと何故か顔を赤らめてパッと手を離した。
「ん? どうしたの?」
愛歌は幼馴染たちの行動に首を傾げる。
小さい頃からよく一緒に遊んでいたから、手を繋いで歩くのは今更照れることでもないのに。
「ハルキとミフユも手を繋いだ方がいいよ。はぐれてしまうからね」
と言うセリオスは、愛歌の手をしっかり握っている。
全く照れる様子のない2人を見て、春樹と美冬もおずおずとまた手を繋いだ。
前を歩き始める金髪コンビは、全く照れる様子もなくニコニコしながら手を繋いで歩いている。
「なんか凄く自然に手を繋いでない?」
「いつの間にくっついた?」
「愛歌、玉の輿?」
後ろを歩く美冬と春樹は、自分たちの甘酸っぱい感情を棚上げして囁き合う。
と、そこへ酔っ払いオヤジがフラフラ~ッと寄って来て、セリオスにぶつかりそうになる。
すると愛歌はスイッとセリオスを抱き寄せて、難なく回避させた。
表情ひとつ変えず、自然に。
避けられた酔っ払いオヤジは、そのままヘロヘロ~ッとおぼつかない足取りで去って行った。
「ありがとう」
「どういたしまして」
抱き寄せられたセリオスは、愛歌に抱きつく体勢のまま顔を上げて微笑む。
愛歌も片腕でセリオスを抱き寄せたまま、微笑み返した。
その様子は、身長差のせいで愛歌が男性ぽく見えてしまう。
桔梗の花柄の浴衣でも、イケメンにしか見えないのはどういうことなのか?
一方のセリオスはサラサラ金髪をセミロングに伸ばしているせいで、紺色の浴衣でも女の子っぽい。
「どっちが王子様か分からんコンビだな」
「そうね」
後ろで見ていた春樹と美冬は、半目になりながら呟いていた。




