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【第一部完結】雪割草の咲く頃に  作者: BIRD
異能を継ぐ者

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第34話:第二皇子と兄弟たち

 生まれ順に関係なく皇帝になれる可能性がある。

 それを聞いた第二皇子ヴォルグは、兄ヒュブリスとは対照的に喜んだ。

 他国であれば次男以下は長男の予備みたいなもの。

 しかし帝国では等しい継承権があるのだ。


(……兄上は暗殺に金を使うか。ならば私は他の手を使おう)


 ヴォルグは冷たくなってグッタリした子供を氷水の中から抱き上げながら思う。

 割れた氷と共に冬の池に浮かんでいたのは、異母弟である幼い皇子。

 シェースチ・ニェヴィン・シュタルク。

 最初に死んだのは、末子である第八皇子であった。


「どうしてこんな寒い日に池へ行ったりしたの」


 棺に納められた小さな遺体に抱きついて、セリオスは泣いていた。

 シェースチとセリオスは仲が良い。

 その日は書庫にある本を読んであげる予定だったが、部屋にいないので城内を探し回っていたという。

 ヴォルグもセリオスに頼まれて末弟を探し、雪に覆われた庭園にある池で変わり果てた姿を見つけた。

 遺体と一緒にボールが池に浮かんでいたので、それを拾おうとして氷が割れて落ちたのだろう。

 何故冬の庭でボール遊びなどしていたか、誰か一緒にいなかったのか、それは明らかにはならなかった。


 帝国では、暗殺は珍しくない。

 だからこそ皇族は全員毒殺防止の装備品を常備しているのだ。



 2番目に死んだのは、皇子ではなく皇女だった。

 帝国では男女平等に王位継承権を持つ。

 第一皇女ローザ・クラシーヴィ・シュタルクは、社交界デビュー前の14歳で短い生涯を閉じた。

 自室のテラスからの転落死だが、何故落ちたのかは不明のままである。


(社交界に出て貴族を味方につけることを阻止したんだな)


 棺を見つめてヴォルグは思う。

 薔薇の花で飾られた遺体は、損傷が激しいため布に包まれていた。

 美しかった妹の無残な死は、ヴォルグに静かな怒りをもたらす。

 ヴォルグは少々女好きなところがあるが、女性に優しいことでよく知られていた。


(兄上を圧倒する力を得てやる)


 ヴォルグは帝国の歴史や皇帝に関することを徹底的に調べ始める。

 そうして見つけたのが、1000年前に運用停止処分された研究所であった。


 皇族権限で立ち入った建物の地下、隠し扉の向こう側にあったのは古代の遺産。

 凍結保存された数多くの卵を見つけたヴォルグは、同じく保存されていたデータを参考に卵の1つを孵化装置にセットした。

 40日の後に卵は孵化、出てきたのは灰色のフワフワした綿毛に覆われた雛鳥。

 雛鳥は美しい紫色の瞳をしていた。


「私に力を貸してくれるか?」

『はい。ご主人様』

「名を与えてやろう。お前の名は【ソーニャ】。帝国語で英知という意味だ」


 雛鳥と目を合わせて話しかけると、テレパシーが脳内に流れ込んでくる。

 差し伸べた両手の中へ、雛鳥はすぐに乗ってきた。

 ソーニャと名付けられた雛は、わずか1ヶ月で成鳥となった。


『私の全てを、ヴォルグ様に捧げます』


 灰色の綿毛が純白の羽毛に変わる頃、雛鳥から白鳥に変わった古代の人工生命体は宣言する。

 その身体が光に包まれ、シルエットが縦に長くなり、現れたのは白いドレス姿の美しい乙女。


「末永くお傍に置いて下さいまし」

「勿論だ。お前を手放すことはないよ」


 微笑みながら抱きついてくるソーニャを、ヴォルグは恋人のように受け止めて抱擁した。

 以降、人工生命体ソーニャはヴォルグの寵愛を受け、傍に仕える者となって現在に至る。

 エルガー皇帝のものとはならずに封印された戦乙女は、1000年の時を超えてヴォルグのものとなった。

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