第30話:隠された情報
白い羽はその記憶を語り終えると燐光が消え、一見普通の鳥の羽に戻った。
今まで祖先の秘密を知らなかった愛歌・冬斗・冬馬は驚き過ぎて固まっている。
ある程度は知っていた優人と風花は子供たちほど驚いてはいないものの、そこまで詳しい経緯は知らなかったため、桐の小箱の中へ戻した羽を見つめて考え込んでいた。
「エルガー・ツォルン・シュタルクといえば、今から約1000年くらい前の皇帝ね。帝国史上最恐の君主として歴史に残されているわ」
羽の記憶に付け加えるように、ソーニャが言う。
彼女は隠された卵から生まれた者。
羽の持ち主が知らぬ【帝国のその後】を情報として持っていた。
「少し睨むだけで相手の心を凍り付かせるほどの恐怖を与えたと言い伝えられていて、あまりの恐ろしさに妃となる者すらいなかったそうよ」
「……じゃあ、セリオスたち、今の皇族は?」
「エルガー皇帝の死後、弟が帝位を継いだから、その末裔ね」
愛歌は親しくなったセリオスが暴君の子孫ではないと知ってホッとした。
もしもセリオスが愛歌たちの祖先を【廃棄】した皇帝の子孫だったら、少々複雑な気持ちになるところだったから。
「エルガー皇帝は子孫を残すために貴族の令嬢を娶ろうとしたけれど、恐ろしさのあまり令嬢たちは自害してしまい、怒った皇帝によって令嬢の貴族家は取り潰されたそうよ」
「……そこまでする?!」
怖すぎてモテない男というには次元が違い過ぎる。
婚約者になるのが嫌で自殺なんて、どれほど怖がられていたのやら。
とんでもない暴君の話に、愛歌は驚きツッコミを入れた。
「そしてこれは私たちを作った研究所の極秘データだけど、エルガー皇帝は自らの子孫を残す道具として貴方たちの祖先を作らせたのよ」
「「「えぇっ?!」」」
これには愛歌・冬斗・冬馬が一斉に驚きの声を上げた。
声は上げないものの優人と風花も驚愕している。
人間と結婚できないからといって、人工生命体を服従させて子を産ませようとする男の気が知れない。
「でも、羽の記憶にある通り、刷り込みに失敗して服従も覚醒もせず、怒った皇帝に廃棄されたらしいわね。その後も生殖能力を持つ個体が作られたけれど、いずれも刷り込み失敗で生まれた直後に斬り殺されたそうよ」
「……怖いし、酷すぎる」
祖先も知らなかったその後の話に、愛歌たちはゾッとした。
人工物とはいえ、祖先の羽の記憶によれば感情はあっただろう。
それを無慈悲に殺す男が子孫を残さなくて良かったとも思えた。




