第24話:西野家の人々
「いらっしゃいませ! こんな庶民宿に王族の方が来られるなんて初めてですよ。精一杯おもてなししますね」
「お世話になります!」
オホーツク海が見える、民宿西野。
愛歌の父が料理人、調理補助兼客室清掃が双子の兄たち、母が女将としてやりくりする小規模な宿。
部屋は簡素な和室で、8畳間が10室、畳の床とフローリングの床が半々になった12畳の和洋室が1室。
セリオスと護衛騎士たちは、1ヶ月まるっと貸し切り宿泊の団体客として歓迎された。
部屋の振り分けはセリオスとロウで1室、隊長含め20名いる騎士たちも2人ずつ相部屋である。
「泊めてもらえるのなら、宿泊費は出すよ」
「大人数の料理をお父上1人で作るのは大変でしょう、私も調理師免許はあるので食事の支度を手伝いますね」
ハイシーズンの7~8月でも空き部屋だらけの民宿が満室になるうえに、料理人までついてくる。
民宿西野にとって最高のお客様たちだ。
「おぉ! これが【タタミ】か。なかなか居心地の良いものだね」
「布団を出し入れしてして、寝室にも居間にも使える部屋とは便利ですね」
和洋室に泊まるセリオスとロウは、特に畳の床の和室部分が気に入った様子。
布団の上げ下ろしはいつもなら愛歌の兄たちがするのだが、騎士たちもロウもやり方を覚えて自分で上げ下ろしをするという。
セリオスも興味津々で自分もやりたいと言い出し、布団の上げ下ろしをする皇子様が出来上がった。
「アイカの家族はみんな背が高いなぁ」
愛歌の兄たちから布団の敷き方を習った後、セリオスは長身の2人を見上げて言う。
双子はどちらも190cmの高身長で、足の長いモデル体型だ。
身長150cmほどの小柄なセリオスとは、40cmもの身長差がある。
「うん。西野家の人々に囲まれると、まるで竹林にいるみたいだよね」
「俺はあの長身が羨ましいぜ」
遊びに来た美冬と春樹が笑って言う。
西野家の身長ランキング、1位が双子の長男次男190cm、2位が父185cm、3位が愛歌180cm、一番低い母でも170cm近い。
バスケ部の春樹は170cmで、西野家にいると背が低く見える。
美冬は157cm、西野家の面々に囲まれたら竹林に入り込んだ気分になるらしい。
今いる面々の中で最も低い身長150cmのセリオスに至っては、竹林に迷い込んだ子供のようだ。
「それに、金髪の人が多いんだね」
「うちの御先祖様には、何代か前に北方民族が混ざっていると言われているよ」
調理を手伝うロウと共に廊下を歩く双子の後ろ姿を眺めながら、セリオスが言う。
応える愛歌も、兄たちや父も金髪で、母だけが黒髪だ。
西野家の祖先に北方民族らしき白色人種が混じっていることは愛歌も知っているが、具体的にいつ頃でどんな人だったかは知らなかった。




