第23話:夏休みの帰省
期末テストが終わり、生徒たちお待ちかねの夏休みがやってきた。
夏休みは、学生寮暮らしの愛歌たちが実家に帰れる時期でもある。
留学生のセリオスは、実家(シュタルク城)に帰ると暗殺の危険が増すので、帰る予定は無かった。
「学校が休みの期間は何して過ごすの?」
「そうだなぁ、本でも読んでいればいいかな」
学期末、半日授業の放課後、カフェ吐夢宗谷で昼食をとる愛歌たち。
問いかける愛歌に答えるセリオスは、ホテルの自室に引き篭もる予定らしい。
外出すると暗殺者が張り切って出てくるので鬱陶しいのだ。
「毒殺されることはないが、外出する度に狙われるからね。友人たちと出かける以外の外出は控えておくよ」
「そっか」
食後のコーヒーを飲みながらセリオスと会話していた愛歌。
ふと何か気付いたように使い終えた割り箸を手に取ると、セリオスの真横の空中に箸を向けた。
「え?」
「また?」
美冬と春樹もあまり驚かなくなってしまった暗殺者からの攻撃。
愛歌が持つ割り箸に、弾丸が豆か何かみたいにつままれている。
「返しておくね」
涼しい顔で言う愛歌が、箸を持つ手を軽く振る。
つままれていた弾丸が、暗殺者に返された。
飛んでいくそれを見送った後、愛歌もセリオスも美冬も春樹も、まるで何事も無かったかのようにまた談笑を始める。
「夏休みは長いよ。ずっと引き篭もってたら体力落ちちゃうんじゃない?」
「そうだね」
暗殺未遂に構わず、美冬が聞く。
セリオスも気にしない方向で答えた。
「じゃあセリオス、うちに泊まりに来る?」
「えっ? いいのかい?」
「うん、みんなで遊ぼう」
愛歌の提案に、セリオスが驚きつつも嬉しそうに問う。
愛歌が一緒にいてくれるなら、ホテルに引き篭もる必要は無い。
「私の実家は民宿だから、騎士のみなさんも来ていいよ。観光客なんて滅多にこないから、貸し切りにできるよ」
「ありがとう! そうさせてもらうよ」
あっさり決まり、セリオスとロウと護衛騎士たちは、愛歌の両親が経営する民宿で夏休みを過ごすことになった。
一方。
自作の銃でセリオスを狙った暗殺者は、もはや対応に慣れた騎士たちに処理されていた。
「こいつも強制送還でいいですか?」
「ああ、それでいい」
顔の真横を通過した弾丸に青ざめてフリーズするスナイパー系暗殺者の若い男。
男の顔の横には、壁にめり込んだ弾丸があった。
飛んでくる弾丸を割り箸でつまんだ上に、投げ返してくるなんて想像しなかったのだろう。
目を見開いたまま思考停止している男が我に返る前に、駆けつけた護衛騎士たちが囲んで捕獲。
その後、チャーター機で帝国の領土内森林上空に運ばれた暗殺者の男は、スカイダイビング初心者みたいに絶叫しながら投げ落とされていった。




