第22話:期末テスト
夏休みが近付く頃、学生たちを悩ませるのは【期末テスト】。
愛歌と美冬にとっては何でもないイベントだが、春樹にとってはその学期末最大の壁である。
「ほらここ、間違ってるよ」
「ぬぉっ?! またか!」
学生寮の談話室で、美冬に何度目かの模擬テストをしてもらう春樹。
必死で勉強したのに、また間違えてしまったらしい。
「うぅ~、似たような名前が多すぎるぜ」
「春樹は人の名前覚えるの苦手だもんね」
「おまけにみんな名前長ぇよ」
「北方民族大体セカンドネームが入るからね~」
ボヤく春樹を美冬がなぐさめている。
春樹が苦戦しているのは歴史。
いつどこどこで誰が何をしたか、所謂時系列を覚えるのが苦手な春樹には、歴史テストは最難関だった。
「私の身内が頭を悩ませてるみたいだね」
「もう頭から煙出そうだぜ……」
「みなさん、お茶を淹れましたので、一休みするといいですよ」
祖先が歴史の教科書に出ているセリオスが苦笑する横で、疲れ果てた春樹はソファの背もたれに身体を預けている。
その後ろから、ロウが紅茶とクッキーを持ってきてくれた。
「教会の敷地内で採れた茶葉をどうぞ」
「わぁ、良い香りですね」
少し甘い芳香が漂う。
花をブレンドしているような華やかで上品な香りのお茶に、美冬がうっとりして微笑んだ。
この茶葉は、ロウの実家にもなっている教会の庭園で、孤児たちが育てたもの。
セリオスが特に気に入っている品だ。
「このお茶は、セリオス様のお友達になってくれる方々へのお土産に持ってきたんです」
ロウは微笑む。
その茶葉は、帝国を出る際に、孤児院のメンバーからセリオス様と仲良くしてくれる人にも飲ませてあげてと託された物だった。
談話室には自販機の他に給湯室があり、学生たちが自由に使うことができる。
ロウは学生ではないが、学園から使用許可をもらっていた。
「このクッキーもサクサクしていて美味しいです」
「使われている小麦は、私の知り合いの畑で採れたものなんですよ」
お茶うけに添えたクッキーは、ロウの手作り。
使われている小麦は、孤児院から独立して農業を始めた同期が作った物だった。
ロウが菓子作りが得意なことを知る彼は、菓子に使えと自家製の小麦粉を持たせてくれたのだ。
「セリオスは歴史が得意そうね」
「立場上、世界の歴史や情勢は知らねばならないからね」
ロウの手製クッキーをつまみながら、愛歌とセリオスがノンビリ語らう。
優雅に紅茶を飲む金髪美形コンビに、テストの不安は無さそうに見える。
今いるメンバーの中で、歴史を覚えるのに苦戦するのは春樹1人であった。
そうして迎えた学期末テスト、春樹はギリギリセーフの赤点回避にホッとする。
美冬が平均を余裕で上回るのは、いつも通り。
愛歌がオール満点なのも、いつも通り。
生徒たちが驚いたのは、編入生の初参加セリオスが、愛歌と並ぶオール満点をとったこと。
「セリオス君、凄~い!」
「歴史だけじゃなかったのか……」
ニコニコしながら拍手する美冬。
その横で、ギリギリ赤点回避の春樹が青ざめていた。




