第19話:ヒュブリスの驚き
帝国王都ノリリスク。
王城の執務室で、第一皇子ヒュブリスはまた眉間に皺を寄せていた。
小鹿のように無力な弟が、成長して大きな角を生やす前に片付けたい。
帝国の王族は毒殺を防ぐアクセサリーに守られているため、毒を盛ることは無意味。
セリオスは異国にいるため、武力で圧倒して護衛騎士もろとも葬ることはできない。
そう思って暗殺者を向かわせているのだが、報告は彼を満足させるものではなかった。
「また失敗だと?」
「はい。失敗した男は生きておりますが、始末いたしましょうか?」
3度目の暗殺失敗を告げられ、ヒュブリスは忌々しそうに顔を歪める。
強制送還されたアーチェリー男は組織に報告へ行き、観念して捕縛されていた。
本来なら失敗した暗殺者は始末される。
が、3度目の失敗ともなると処刑するのも煩わしかった。
「くだらないことに時間を割くな。次の者を手配しろ」
「承知致しました」
ヒュブリスの言葉により、暗殺失敗者は処刑を免れた。
帝国の暗殺者や偵察者は、網膜に映る映像を記録したり送信したりする機能を組み込まれている。
アーチェリー男の網膜から送信された動画には、男が見たものが残されていた。
強化弓によって、セリオスの心臓めがけて放たれた矢。
それが目標に達する前に、隣にいた愛歌が掴み取る。
一緒にした美冬と春樹が驚いて何か言う様子も映っている。
愛歌は手にした矢を投げ返してきた。
矢が男の間近まで迫った直後に映像がブレたのは、矢が当たった衝撃か。
映像は後ろへ引っ張られて仰向けになったように空が写り込んだ直後、暗転した。
それは、網膜の持ち主が意識を失ったことを意味している。
死亡または失神。
男は存命なので、このときは気絶しただけだったようだ。
「セリオスの側にいる金髪の青年は何者だ? 傭兵だとしたらかなりの高ランクではないか?」
ヒュブリスは暗殺を妨げる者を忌々しく思う一方で、金を積んでこちらへ引き入れようかとも考える。
騎士とは違い、傭兵なら金で動く。
セリオスよりも高額を提示すれば、すぐに寝返るだろうと考えた。
「それが……地元住民の話によれば、高校生だそうです」
「……は? 今なんと言った?」
しかし、偵察者に聞き込みをさせていた側近は、想定外の内容を告げる。
ヒュブリスは自分の耳を疑った。
「【高校生】でございます」
「無傷で暗殺者を退けた男が高校生だと?」
側近は自身も驚いた内容を、再度ヒュブリスに告げる。
ヒュブリスは愕然として更に問う。
返ってきた言葉が、更なる驚きをもたらす。
「あの者は女性で、セリオス様と同じ16歳だそうです」
「女……だと?」
更なる衝撃の情報。
ヒュブリスは理解が追い付かず、しばしフリーズしてしまった。




