第5話:皇子セリオス
皇子たちが宿泊している高級ホテルのラウンジで、愛歌たちは紅茶とケーキを御馳走になった。
庶民である彼等にはテレビでしか見たことがないようなお高いラウンジで、本来ならば緊張する筈なのだが……。
「あ……愛歌がっ、よ…傭兵……あはははっ!」
「お、男と間違われるのは、よ、よくあるけどっ……ぶはははっ!」
美冬と春樹が大爆笑している。
愛歌が性別を間違われたくらいなら、幼馴染たちはあ~いつものことね~と苦笑で終わるところだけれど。
女子高生が凄腕の傭兵と間違われたと知って、美冬と春樹は椅子から転げ落ちそうな勢いで笑い出した。
貸し切りなので他の客はおらず、無礼講とも言われたので遠慮なく笑っている。
「そこ! 笑い過ぎ!」
ムゥ~ッと半目で睨む愛歌の横で、皇子と側近が申し訳なさそうにうつむいていた。
やがて幼馴染たちの笑いがおさまる頃、皇子と側近は詫びと名乗りをした。
「本当にすまなかった、名乗るのが遅れたが私はセリオス、帝国の第三皇子だ」
「申し訳ございません、私は殿下の側仕えをしておりますロウといいます」
セリオスは見た目は華奢な美少年だけど、喋ると王族らしく堂々としている。
ロウは執事っぽい品の良さがあった。
「気にしなくていいですよ」
愛歌は幼馴染たちを睨んだものの、セリオスとロウが謝るので、それ以上怒るのはやめておいた。
セリオスたちはホッとしたようだ。
「男と間違われるのはいつもですが、傭兵と間違われたのは人生初でビックリしましたけど」
「あの3人を苦も無く倒してしまう学生がいるなんて、思ってもみなかったからね」
愛歌は何故自分が傭兵と間違われたのか不思議だったが、どうやらナイフの男たちはプロの暗殺者だったらしい。
セリオスとロウを襲った3人組は、ゴロつきに見せかけて実は訓練を積んだ殺し屋だったという。
それを数秒で倒してしまう女子高生がいると知り、壁際に控えている軍人たちが「日本すげぇ」とか思っていたのは内緒だ。
「君は何か武術を嗜んでいるのかな? さっきの蹴りは素人とは思えないのだが」
「それは、空手部でちょこっと練習したからですよ」
「おぉ、ジャパニーズ・カラテですか。あんなにも強くなるものなのですね」
セリオスとロウは愛歌の強さが気になってしょうがないらしい。
愛歌はたいていのスポーツは少し練習しただけでコツを掴んでしまう。
特に武術系は得意分野だった。
(皇子さまとの会話なのに、トキメキが見当たらない……)
(空手ちょこっとやったくらいで暗殺者倒すとか、普通は無いけどな)
などと、美冬と春樹が思っていたことに、愛歌もセリオスもロウも、全く気付いてなかった。




