第2話:幼馴染
放課後。
「運動した後は甘い物がイチバンだね!」
「うんうん! チョコレートソースたっぷりクレープ最高!」
愛歌は満足そうな笑みを浮かべながらクレープを頬張る。
その隣で、クラスメイトで幼馴染でもある美冬もクレープに夢中だ。
クラス対抗試合に勝ったら、この店のクレープを食べよう。
そんな予定を立てていた2人は、望み通りになって御機嫌だ。
最北の地にあるカフェ【吐夢宗谷】。
そこのテイクアウトメニュー、クレープは観光客や学生たちに大人気だ。
パリッと焼かれた生地に北海道産の濃厚な牛乳を使った生クリームやクリームチーズ、様々なフルーツやナッツなどを好みで加えてもらえる。
カフェ内でも食べられるが、天気の良い日には目の前に広がるオホーツクの海を眺められるテラス席がいい。
気温が20度に届かない道北の夏、愛歌たちはテラス席に座り、海を眺めながらクレープを頬張った。
他の席に座ってティータイムを愉しむ人々が、愛歌の容姿に見惚れてポーッとしている。
私服の愛歌はシンプルなデザインの長袖YシャツとスリムなGパン姿。
細身の長身で、胸の辺りも肉がほとんどない(所謂絶壁)。
なので、知らない人は長髪の青年と間違うことがよくあった。
が、本人はあまり気にしていない。
今は美味しいクレープを食べるのに夢中である。
「ちくしょ~、次は勝つからな」
悔しそうに3人分の支払いをするのは、同じく幼馴染の春樹。
彼は半ばヤケ食いみたいにクレープをムシャムシャ食べている。
負けた方がクレープを奢るという賭けは、春樹の完敗だった。
彼はバスケ部の主力メンバーだが、部員ではない愛歌にあっさりと防衛を突破された1人である。
というか、愛歌の身体能力が高すぎて、どのスポーツで競っても全戦全敗なのだが。
「ふふふ、次も御馳走になれるかな?」
愛歌はニコニコしながらクレープを食べている。
愛歌が食べているのは、大粒のブルーベリーとクリームチーズと生クリーム、ブルーベリーソースをトッピングしたチーズケーキみたいな味わいのクレープ。
美冬が食べているのは、バナナと生クリームにチョコレートソース、砕いたクルミをトッピングしたもの。
春樹がヤケ食いしているのは、大きな粗挽きソーセージにピザチーズ、トマトソースをトッピングした惣菜タイプのクレープだ。
「美味しかったね~!」
「春樹、ごちそうさま!」
「へいへい」
お腹が満たされた3人は、食後のお茶を飲み干して店を出た。
帰る方向は同じ、一緒に学園へ戻る。
3人は学園から遠い村の子供たちで、通学が不便なので学生寮で暮らしていた。
(あれ? あの人たち何してるんだろう?)
カフェから学生寮への帰り道、愛歌はふと異変に気付く。
雑談に夢中の美冬と春樹は気付いていない。
(ちょっと見てこよう)
愛歌は2人からスッと離れて路地裏へ向かった。




