第1話:学園の人気者
日本最北端の学校、宗谷学園。
その体育館では、クラス対抗バスケットボール大会が実施されていた。
インターハイでもなんでもない、ただの学園内の試合なのに、随分と観客が多い。
盛り上がっているのは、主に女生徒であった。
「「「アイカさま、がんばってぇ!」」」
観客席から若い女性たちの黄色い声援が飛ぶ。
その声の送り先、しなやかな動作でボールをドリブルさせながらゴールを目指すのは西野愛歌。
後ろで1つに束ねた長いストレートヘアは、艷やかな黄金色。
敵味方どちらも黒髪の人々の中、唯一の金髪はよく目立った。
それ以上に目を引くのは、スタイルの良さと優れた身体能力だ。
バスケに有利な長身に無駄な肉はついておらず、モデルのような細身で俊敏な動作も美しい。
相手チー厶のブロックがまるで効かない。
スイスイと躱す様子は風の如し。
愛歌は敵陣を軽やかに突破すると、ゴールに手が届くほどの跳躍と共にボールを叩き込んだ。
キャー! という歓声が体育館内に響く。
クラス対抗戦なのに、クラスメイトだけでなく対戦相手側の女生徒たちまでキャーキャー騒いでいる。
彼女たちにとってはクラスの勝敗よりも、唯一人の活躍が気になってしょうがないらしい。
「あ~あ、だからお前のクラスとは対戦したくねぇんだよ」
試合後に苦笑するのは、対戦相手側の男子生徒。
軽く愚痴ってはいるが、悪意は無かった。
もはやいつものことなので、半ば諦めているようだ。
「ゴメンネ」
クスッと笑う愛歌の、澄んだ瞳はアメジストのような紫色。
日本だけでなく、海外でも珍しい色だ。
色白で中性的な顔立ちの中で、長い睫毛に縁どられるその瞳は宝石のように人を惹きつける魅力があった。
容姿の良い奴は得だよな~と思いつつ、話しかけた対戦相手は苦笑して軽く嘆息する。
「まあいいや。来週はうちの部のヘルプ頼むぜ」
「はいはい」
ついでみたいに頼んでくる相手に軽く返事をして、愛歌は体育館の更衣室へ向かった。
「きゃ……あ、なんだ愛歌かぁ」
更衣室に入ると、着替えていた女生徒が一瞬悲鳴をあげかけて、愛歌だと分るとホッとしたような顔になる。
愛歌は苦笑した。
「今、男と間違えかけたね?」
「ごめーん、だって愛歌ってばイケメンなんだもん~アハハハ」
ジト目で睨んでやると、相手は笑ってごまかそうとする。
こんなやりとりはもう慣れっこな愛歌は、それ以上は怒らない。
西野愛歌は学園内で有名な「イケメンにしか見えない女子」であった。




