第30話 最強じゃない、でも最強のパーティー
迷宮核が砕けたあと、しばらく誰も動かなかった。
黒い霧は完全に消え、あれほど重かった空気も嘘のように軽くなっている。さっきまで脈打っていた壁も、ただの石へと戻っていた。
「……終わったな」
ガルドが剣を肩に担ぐ。
「みたいだな」
俺も立ち上がる。身体は重いが、不思議と気分は軽かった。
リラが周囲を見渡す。
「魔力の流れも正常に戻っています」
レンが短く言う。
「異常なし」
完全に終わった。
あの侵食体も、迷宮核も。
全部。
「帰るか」
ガルドが言う。
「長居する理由もねえ」
セリアも頷く。
「賛成。さすがに疲れたわ」
バルクは無言で装備を確認している。
俺たちも同じだった。
迷宮を戻る道は、来た時とはまるで違っていた。黒く侵食されていた場所はすべて元に戻り、異形体の気配もない。まるで何事もなかったかのような静けさだ。
「本当に、終わったんですね」
リラがぽつりと呟く。
「だな」
俺は少しだけ振り返る。
もうあの異常な空間は見えない。
でも確かに、あそこにあった。
戦いも、選択も。
全部。
迷宮の外に出たとき、光が少し眩しかった。
「……外だ」
レンが言う。
「生還」
「お疲れ」
思わずその場に座り込みそうになるが、なんとか耐える。
そこへ、ギルドの職員たちが駆け寄ってきた。
「無事ですか!?」
「調査は!?」
ミリアもその中にいた。
「ユウトさん!」
「無事です」
俺が答えると、ミリアはほっとしたように息を吐いた。
「よかった……本当に」
「で、結果は?」
ガルドが聞く。
俺は少し考えてから言った。
「迷宮核は破壊した」
「異常の原因も排除済み」
一瞬、周囲が静まる。
そして――
「本当ですか!?」
ざわっと空気が動く。
ミリアが信じられないという顔をする。
「それは……」
「正式に確認は必要ですが」
「もし事実なら、大規模な功績です」
ガルドが鼻で笑う。
「確認でもなんでもしろ」
「事実だからな」
その後、俺たちはギルドへ戻された。
応接室。
見慣れた場所。
でも、空気は全然違う。
「改めて」
ミリアが言う。
「今回の件、本当にありがとうございました」
「迷宮の異常は完全に収束しています」
「街への被害も最小限で済みました」
「そうか」
俺は息を吐く。
ちゃんと意味はあったらしい。
ミリアが続ける。
「そして評価ですが――」
少し間を置く。
「ユウトさんのパーティー」
「特例として、Cランク上位へ昇格となります」
「おお」
思わず声が出る。
リラが小さく笑う。
「順当ですね」
レンも言う。
「問題ない」
「だからそれ便利だな」
ガルドがこちらを見る。
「……気に入らねえな」
「またそれ?」
「だが」
少しだけ間を置いて。
「強いのは認める」
「お、デレた」
「うるせえ」
セリアが苦笑する。
「素直じゃないわね」
バルクは一度だけ頷いた。
「また会う」
短い言葉。
でも十分だった。
紅蓮の牙。
最初は合わないと思った。
でも今は――
「またな」
普通に言えた。
あいつらも頷いた。
その後、解散となった。
ギルドを出て、街の通りを歩く。
いつも通りの景色。
人の声。
日常。
「……戻ってきたな」
俺が言うと、リラが微笑む。
「はい」
レンも言う。
「日常」
少しだけ沈黙。
でも、嫌じゃない。
「で」
俺は二人を見る。
「これからどうする?」
リラが即答する。
「強くなります」
「即答だな」
「まだ足りません」
レンも言う。
「上を目指す」
俺は笑う。
「だよな」
迷宮はまだある。
世界も広い。
俺たちはまだ途中だ。
「行くか」
歩き出す。
三人で。
並んで。
完全じゃない。
ズレもある。
でも。
それでいい。
俺たちは――
「最強じゃない」
でも。
「最強のパーティーだ」
そう思えた。
ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。
この話は、これで一度終了させて頂きます。
ユウト「またね!!」
リラ「はい、またいつか」
レン「問題ない…また」




