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第24話 紅蓮の牙

迷宮の奥へ進むにつれて、明らかに環境が変わってきた。壁の色は黒ずみ、ところどころに脈のようなものが走っている。触れてはいけないと直感で分かる。

「……これ、本当に迷宮か?」

「生体に近いですね」

 リラの声も少し硬い。レンは周囲を見ながら言う。

「変質している」

 俺は足元を見る。地面に黒い染みのようなものが広がっている。それはゆっくりと動いているようにも見えた。

「気持ち悪いな……」

 その時だった。奥から金属音が響いた。

 ガキンッ!

 誰かが戦っている。

「……人だ」

「行きましょう」

 俺たちは音の方へ向かう。通路を抜けた先、少し開けた空間で――戦闘が起きていた。

 見えたのは三人の冒険者。

 そしてその前にいるのは――

迷宮異形体

Lv20

迷宮異形体

Lv20

「2体同時か……」

 しかも様子がおかしい。異形体の周囲に黒い霧のようなものが漂い、空間そのものが歪んでいる。

 戦っている三人は、それを正面から受け止めていた。

「はああああっ!」

 前に出ている剣士が一撃を叩き込む。凄まじい威力。だが――

「チッ、浅い!」

 手応えが足りないらしい。

 後方の魔法使いが叫ぶ。

「まとめて焼き払うわよ!」

 炎が広がる。範囲魔法。威力は高い。

 だが異形体は揺れるだけで、完全には崩れない。

「効いてるけど、足りない!」

 盾役の男が前で受け止める。

「押されてるぞ!」

 連携はしている。でも――どこか噛み合っていない。

「……あれ」

 俺は気づく。

「強いけど」

「連携が雑だ」

 リラも同じことを感じていた。

「個の力に頼っていますね」

 レンが言う。

「押し切るタイプ」

 その時、剣士がこちらに気づいた。

「おい!」

「誰だお前ら!」

 かなり荒い口調だ。

「ギルドの依頼で来た」

 俺が答えると、男は舌打ちした。

「チッ、増援か」

「なら邪魔すんな!」

「は?」

 いや、普通逆じゃない?

 魔法使いの女が言う。

「ガルド、連携が崩れる」

「分かってる!」

 どうやらこの男がリーダーらしい。

 紅蓮の牙。

 ミリアが言っていた別パーティーか。

「助けますか?」

 リラが聞く。

 俺は少し考える。

 だが、その前に状況が動いた。

 異形体が揺れる。

 そして――

 さらに膨張した。

 ズルリと形が崩れ、増える。

迷宮異形体

Lv20

迷宮異形体

Lv20

迷宮異形体

Lv20

「増えた!?」

 ガルドが叫ぶ。

「ふざけんな!」

 完全に想定外だ。

 しかも。

 空間が歪む。

 ピロン。

 ──干渉強度上昇

「まずい」

 分体網がさらに不安定になる。

 紅蓮の牙の動きも乱れる。

「セリア、タイミングがズレてる!」

「そっちが早すぎるのよ!」

「バルク、前出ろ!」

「無理だ、圧が強い!」

 完全に噛み合っていない。

 強いのに、崩れている。

 俺は決断する。

「介入する」

 リラがすぐに頷く。

「はい」

 レンも言う。

「了解」

 俺は一歩前に出る。

「分体網、断続使用!」

 ピロン。

 一瞬だけ繋ぐ。

「レン、左の個体」

「リラ、右を牽制」

 動きが揃う。

 紅蓮の牙が一瞬驚く。

「……は?」

 俺たちはそのまま戦闘に割り込む。

 レンが一体を引きつける。

 リラがもう一体を削る。

 俺がタイミングを作る。

 そして――

 ガルドの剣が突き刺さる。

「今かよ!」

「今だよ!」

 異形体が崩れる。

迷宮異形体 Lv20

撃破

 残り二体。

 流れが変わった。

 ガルドがこちらを見る。

「……お前ら」

「何やってやがる」

 俺は答える。

「連携してるだけだ」

「……」

 一瞬の沈黙。

 その間にも戦闘は続く。

 そして、最後の一体を倒した時。

 静寂が戻る。

 ガルドが剣を肩に担ぐ。

「……気に入らねえな」

「は?」

「弱そうなのに、動きはいい」

「褒めてるのかケンカ売ってるのかどっちだ」

 魔法使いのセリアが言う。

「連携型……珍しいわね」

 バルクは無言でこちらを見ている。

 ガルドが一歩近づく。

「俺たちは紅蓮の牙だ」

「お前らは?」

「ユウトたちだ」

「そうか」

 短いやり取り。

 でも分かる。

 こいつら――

 強い。

 そして。

 たぶん、合わない。

 その時だった。

 ピロン。

 ──深部反応、急上昇

 全員が同時に奥を見る。

「……来るな」

 ガルドが笑う。

「いいじゃねえか」

 リラが小さく言う。

「本番ですね」

 レンが言う。

「強敵」

 俺は息を吐く。

「だな」

 迷宮の奥。

 そこにいるのは――

 今までとは比べものにならない何か。

 そして。

 この場にいる二つのパーティー。

 協力か、対立か。

 まだ分からない。

 ただ一つ確かなのは――

 ここからが、本当の戦いだ。

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