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第20話 噛み合わない連携

迷宮の奥へ進むほど、空気はさらに重くなっていった。足音が妙に響く。呼吸すらしづらい感覚。俺は小さく息を吐く。

「これ……完全にやばいエリアじゃない?」

「同感です」

 リラも警戒を強めている。レンは無言で前を見ていた。

 その時、分体網が反応した。

 ピロン。

 ──干渉を検知

「まただ」

 さっきより強い。嫌な予感しかしない。

「何かいる」

 レンが言う。直後、前方の空間が歪んだ。

 何もないはずの場所に、黒い影が滲むように現れる。人型。でも輪郭が曖昧で、まるで霧が固まったみたいな存在だった。

迷宮異形体 

Lv20

HP:???

特徴:不定形・魔力干渉


「なにこれ」

 思わず声が出る。初めて見るタイプだ。

「新種です」

 リラが弓を構える。

 レンが一歩前へ出る。

「行く」

 戦闘開始。

 レンが踏み込む。剣が影を斬る。――が、手応えが薄い。

「軽い」

 影が揺れるだけ。ダメージが通っている感じがしない。

 リラの矢が飛ぶ。命中する。しかし同じだ。刺さったはずの矢が、すぐに霧のように消えていく。

「効いてません!」

「物理も魔法も通りにくい?」

 その瞬間、異形体が動いた。滑るように接近してくる。速い。

 レンが受ける。剣で弾く。だが――

「重い」

 レンが一瞬押される。

 異形体の攻撃は軽そうに見えて、妙に重い。感覚がズレる。

「分体網!」

 俺は即座にスキルを発動する。視界が広がる。レンとリラの感覚が繋がる――はずだった。

 違和感。

「……え?」

 繋がりが弱い。

 ノイズが入る。

 視界がぶれる。

 タイミングがズレる。

「これ……」

「うまく繋がらない!」

 リラが驚く。

「干渉されています!」

 レンが回避する。だがいつもより一瞬遅い。その一瞬が危ない。

 異形体の攻撃がかすめる。

「っ」

 レンが後ろに下がる。

「大丈夫か!?」

「問題……少しある」

「あるじゃん!」

 完全にいつもの連携ができていない。分体網が機能していない。

 異形体がさらに動く。今度はリラへ。

「来ます!」

 矢を放つ。しかし軌道がズレる。わずかな誤差。でも致命的。

 異形体が迫る。

「リラ!」

 俺が叫ぶ。レンが割り込む。剣で受ける。

 ドンッ!

 衝撃。レンが大きく後ろへ下がる。

「くそ……」

 初めて見た。レンが押されている。

 俺は歯を食いしばる。

「分体網、最大!」

 もう一度スキルを使う。強引に繋ぐ。視界が広がる。でも――

 ノイズ。

 ズレ。

 同期できない。

「なんだこれ……!」

 まるで、別の何かに邪魔されているみたいだ。

 異形体が動く。今度は俺に来た。

「うわっ!」

 ギリギリで回避。危ない。今のは完全に見えてなかった。

 リラが叫ぶ。

「一度下がりましょう!」

「いやでも――」

 その時、異形体が分裂した。

 ズルリと形が崩れ、二つになる。

迷宮異形体 Lv20

迷宮異形体 Lv20

「増えた!?」

「無理です!」

 リラの判断は正しい。

 俺も理解した。

 これは勝てない。

 今のままじゃ無理だ。

「撤退!」

 レンが即座に動く。

 リラも後退しながら援護する。

 俺も走る。

 後ろから気配が追ってくる。速い。でも追いきれない距離を保つ。

 しばらく走って、ようやく異形体の気配が消えた。

「はぁ……」

 その場に座り込む。

 心臓がうるさい。

 リラも息を整えている。

「危なかったです……」

 レンが言う。

「初めてだ」

「勝てないと判断した」

 俺は苦笑した。

「だよな……」

 悔しい。

 でもはっきり分かった。

「相性最悪だな」

 リラが頷く。

「分体網を妨害してきます」

「つまり」

「連携前提の私たちに対する天敵です」

 レンが言う。

「対策が必要」

 俺は天井を見る。

 迷宮の奥。

 あそこに、あの異形体がいる。

 そしてたぶん――

 あれだけじゃない。

「……面白くなってきた」

 そう呟いた。

 強敵。

 でも。

 だからこそ――

 乗り越える価値がある。

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