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第19話 違和感の迷宮

翌朝。俺たちは再び北の迷宮の前に立っていた。昨日と同じ場所のはずなのに、空気が違う。なんというか――重い。

「……感じますか?」

 リラが小さく言う。

「うん、なんか嫌な感じ」

 レンも短く答える。

「魔力が濃い」

 やっぱり気のせいじゃないらしい。昨日より明らかに迷宮の気配が強い。俺は思わず言った。

「これ、本当に同じ迷宮?」

「構造は同じはずです」

「でも状態は変わっていますね」

 リラの言葉に、俺は少しだけ息を吐いた。つまり――普通じゃない。

 俺たちは慎重に中へ入る。石の通路、薄暗い光、見慣れたはずの景色。でも、どこか違う。静かすぎる。

「……魔物が少ない?」

 俺が言うと、レンが頷く。

「いない」

 リラも周囲を警戒している。

「逆に不自然です」

 その時、奥から物音がした。カサッ。

黒蝕虫

Lv1

 虫だ。レンの一撃で終わる。

「このレベルはいるんだな」

「群れがいないのが気になります」

 確かに。あの虫は普通、群れで出てきたはずだ。単体だけというのは逆に不気味だ。

 しばらく進む。違和感はどんどん強くなる。足音が妙に響く。空気が重い。まるで迷宮全体が生きているみたいだ。

「……変だな」

 俺が呟くと、その瞬間だった。

 ピロン。

 頭の中に音が響く。

 ──反応を検知

「まただ」

 スキルが反応する。分体網。何かに反応している。

「どうしました?」

「分体網が反応してる」

 リラとレンがすぐに警戒を強める。

「近い?」

「いや……」

 俺は目を閉じる。感覚を探る。広がる。繋がる。でも――

「……分かりにくい」

 いつもより感覚が曖昧だ。

「干渉されてる?」

 自分でもよく分からない。ただ一つ言えるのは――普通じゃない。

 その時だった。前方の通路に影が揺れる。

迷宮ゴブリン

Lv9

 ゴブリンが現れる。だが、動きがおかしい。ふらついている。まるで操られているような――

「変だ」

 レンが言う。

「動きが鈍い」

 リラが矢を放つ。

 迷宮ゴブリン Lv9

 撃破。

 だが、倒れた瞬間。

 ゴブリンの体が崩れた。

 ドロッと。

「え?」

「今の……」

 俺たちは思わず立ち止まる。

「普通じゃありません」

 リラの声が低い。

「魔物が崩れるなんて……」

 レンが言う。

「魔力が不安定」

 俺は嫌な予感がした。

「迷宮、壊れてる?」

 答えはない。

 ただ、その時。

 奥から別の音がした。

 足音。

 人の。

「……誰かいる」

 レンが構える。

 俺たちは慎重に進む。

 そして見つけた。

 通路の壁にもたれかかる人影。

「おい、大丈夫か!?」

 駆け寄る。

 装備を見る。

 冒険者だ。

 かなり傷ついている。

「先行パーティーか……?」

 リラがすぐに回復魔法を使う。

「まだ息はあります!」

 男がうっすらと目を開ける。

「……お前ら……」

「ギルドの?」

「そうだ」

 俺が答える。

「何があった?」

 男は震える声で言った。

「迷宮が……」

「変わった……」

「魔物じゃない……」

「もっと……」

 そこで言葉が途切れる。

「おい!」

 意識を失った。

 リラが言う。

「一度戻りますか?」

 俺は少し考える。

 でも。

 分かる。

 この先に何かある。

 そして――

 たぶんそれが原因だ。

「……もう少しだけ進む」

 レンが頷く。

「了解」

 リラも覚悟を決める。

「行きましょう」

 俺たちは立ち上がる。

 迷宮の奥へ。

 そこには――

 明らかに今までと違う「何か」が待っている気がした。

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