第18話 指名依頼
ランク試験から一夜明けた。
俺たちは再びギルドに来ていた。昨日までと違うのは、視線の数だ。明らかに増えている。
「見られてるな」
「見られてますね」
リラは苦笑しながらも落ち着いている。レンはいつも通りだ。
「問題ない」
「いやある」
普通にある。
そんな中、受付のミリアがこちらに気づいて手を振った。
「ユウトさん、こちらへ」
案内されたのは昨日と同じ応接室だった。
「またここ?」
「はい、今回は正式な依頼です」
ミリアの表情は穏やかだが、どこか緊張しているようにも見える。俺たちは席に座った。
「まず結論から言います」
「ユウトさんたちに指名依頼が来ています」
「指名?」
俺は思わず聞き返す。
「はい。通常はランクに応じて依頼が公開されますが、特定のパーティーを指定する場合もあります」
「で、なんで俺たち?」
ミリアは少し間を置いてから言った。
「昨日の迷宮の件です」
「やっぱり」
リラも静かに頷く。
「迷宮核の欠片、そして隠し通路。さらに魔物の外部流出」
ミリアは一つずつ整理するように話す。
「これらはすべて、通常の迷宮では起こりにくい現象です」
「つまり」
「迷宮が不安定になっている可能性があります」
俺は腕を組む。
「それを調べる依頼?」
「はい」
ミリアは一枚の書類を差し出した。
「北の迷宮、再調査依頼」
「危険度:Cランク相当」
「……」
俺は思わずリラを見る。
「Cって」
「今の私たちと同等か少し上です」
「普通に危ないな」
レンが言う。
「問題ない」
「その自信どこから来るの」
ミリアが続ける。
「ただし、この依頼は通常の調査ではありません」
「目的は一つです」
「迷宮核の異常の確認」
その言葉に、昨日の水晶が頭に浮かぶ。
あれはただのアイテムじゃない。
明らかに何かの中心だった。
「それと」
ミリアが少し声を落とす。
「もう一つ理由があります」
「?」
「ユウトさんのスキルです」
「やっぱりそれか」
「転生系スキルが迷宮核に反応したという記録は、ほとんどありません」
「つまり?」
「調査対象です」
「俺が?」
「はい」
思わずため息が出る。
「なんか、完全に面倒なことになってない?」
リラが小さく笑う。
「最初からそうでした」
「否定できない」
レンが言う。
「強くなる機会」
「ポジティブだなあ」
俺はもう一度書類を見る。
北の迷宮。
昨日まで潜っていた場所。
でも、あの奥にはまだ何かある。
そんな気がしていた。
「……受ける?」
俺が聞くと、リラはすぐに頷いた。
「行きましょう」
レンも迷わない。
「行く」
「ですよね」
断る理由はない。
というか、もう巻き込まれてる。
「受けます」
俺が言うと、ミリアは安心したように頷いた。
「ありがとうございます」
「ギルドとしても全面的に支援します」
「それと」
ミリアは少しだけ真剣な表情になる。
「すでに別のパーティーも調査に入っています」
「え?」
「先行調査隊です」
「Cランクパーティー」
「……」
なんか嫌な予感しかしない。
「優秀なパーティーですが」
「昨日から連絡が途絶えています」
「はい出た」
俺は思わず言った。
「それ絶対危ないやつ」
リラも表情を引き締める。
「想定より状況が悪い可能性がありますね」
レンが言う。
「問題ない」
「いや今回は問題あるだろ」
ミリアが最後に言った。
「無理はしないでください」
「ですが」
「この依頼は――今の街にとって重要です」
俺は少しだけ息を吐く。
迷宮。
スキル。
そして異常。
全部が繋がっている気がする。
「分かった」
「行こう」
こうして俺たちは。
再び迷宮へ向かうことになった。
ただし今回は――
昨日より確実に危険な場所へ。




