第17話 ランク試験
翌日。
俺たちはギルドの訓練場に来ていた。
広い。
というか広すぎる。
「ここで試験?」
俺が聞くと、ミリアが頷いた。
「はい」
「ランク試験は実戦形式です」
「ですよね」
周りにはすでに人が集まっている。
冒険者たちだ。
「昨日のパーティーだ」
「オーガ倒したやつら」
「どんなもんか見せてもらおう」
……完全に見世物。
帰りたい。
レンはいつも通りだった。
「問題ない」
リラも息を整える。
「大丈夫です」
「俺だけ緊張してる?」
その時。
試験官が前に出てきた。
中年の男。
ただ立っているだけなのに強いと分かる。
「試験を開始する」
「今回は特例だ」
「個人評価とパーティー評価、両方を見る」
俺は小声で聞く。
「それ普通じゃないの?」
リラが答える。
「普通です」
「冒険者は個人とパーティー、両方で評価されます」
「ですよねー」
知らなかった俺が恥ずかしい。
試験官が続ける。
「まずは個人評価から行う」
「一人ずつ前に出ろ」
来た。
完全に個人テスト。
「最初は――レン」
レンが前に出る。
静かに剣を構える。
檻が開く。
迷宮ゴブリン Lv9
迷宮ゴブリン Lv9
2体。
ゴブリンが突っ込む。
レンが動く。
一歩。
踏み込み。
斬撃。
迷宮ゴブリン Lv9
撃破。
続けてもう一体。
迷宮ゴブリン Lv9
撃破。
終了。
早い。
試験官が言う。
「……良い」
「反応、判断、火力」
「すべて水準以上だ」
観客もざわつく。
「Cランク相当だな」
「新人じゃないだろ」
レンは何も言わず戻ってきた。
「どうだった?」
「普通」
「その普通がすごいんだよ」
「次、リラ」
リラが前に出る。
弓を構える。
檻が開く。
迷宮ゴブリン Lv9
迷宮ゴブリン Lv9
迷宮ゴブリン Lv9
「3体か」
リラが息を整える。
「いきます」
矢が放たれる。
シュッ!
迷宮ゴブリン Lv9
撃破。
次。
もう一体。
撃破。
最後の1体。
近づかれる。
リラが魔法を使う。
「ライト」
迷宮ゴブリン Lv9
撃破。
終了。
試験官が頷く。
「遠距離・魔法の併用」
「安定している」
「Dランク上位〜Cランク相当」
観客が言う。
「バランスいいな」
「パーティー向きだ」
リラが戻ってきた。
「どうでした?」
「普通じゃない普通だった」
「それ褒めてます?」
「たぶん」
「最後、ユウト」
来た。
俺の番。
正直一番不安。
前に出る。
剣を握る。
檻が開く。
迷宮ゴブリン Lv9
「1体?」
優しい。
いや試されてる。
ゴブリンが突っ込む。
俺は剣を振る。
当たる。
迷宮ゴブリン Lv9
撃破。
……倒せた。
でも。
周りの反応が微妙だ。
「普通だな」
「さっきの二人よりは下か」
ですよね。
試験官が言う。
「戦闘技術は平均」
「判断は悪くない」
「Eランク上位〜Dランク下位」
俺は思わず言った。
「ですよね」
リラがフォローする。
「指揮能力があります」
レンも言う。
「連携要員」
試験官が頷く。
「分かっている」
「だから次だ」
え?
まだあるの?
「パーティー評価を行う」
来た。
本番。
檻が開く。
迷宮ゴブリン Lv9
迷宮ゴブリン Lv9
迷宮ゴブリン Lv9
迷宮ゴブリン Lv9
「4体」
俺は深呼吸する。
「分体網」
感覚が広がる。
繋がる。
レンとリラ。
視界。
動き。
全部が共有される。
「行く!」
レンが前へ。
リラが援護。
俺が指示。
「右!」
「次、後ろ!」
完璧に動ける。
まるで一人みたいに。
次々とゴブリンが倒れる。
迷宮ゴブリン Lv9
撃破。
撃破。
撃破。
撃破。
終了。
沈黙。
そして。
「……なんだ今の」
「連携が異常だぞ」
「動きが揃いすぎてる」
試験官が言う。
「なるほど」
「これが本来の力か」
さらに檻が開く。
迷宮オーガ Lv18
「やっぱり出た!」
観客もざわつく。
でも。
今の俺は違う。
見える。
全部見える。
「レン、左」
「リラ、次のタイミングで撃って」
二人が即座に動く。
オーガの攻撃を回避。
連携。
隙を作る。
「今!」
三人同時。
攻撃が決まる。
迷宮オーガ Lv18
――討伐。
大歓声が上がる。
「すげええ!」
「さっきと別物だぞ!」
「パーティーで化けるタイプか!」
試験官が言う。
「結論だ」
「個人ランク」
「レン:C」
「リラ:D上位」
「ユウト:D下位」
俺は思わず言う。
「まあ妥当」
試験官が続ける。
「パーティー評価」
「Cランク上位相当」
ざわつく。
「高いぞ」
「新人パーティーでそれかよ」
リラが嬉しそうに言う。
「すごいです」
レンが言う。
「問題ない」
「いやそこは喜ぼう?」
試験官が最後に言った。
「合格だ」
「お前たちは――」
「中級ランクパーティーとして認める」
こうして俺たちは。
個人ではまだ未熟。
でも――
パーティーとしては強い。
そんな立ち位置で。
冒険者としての一歩を踏み出した。




