4:ベッドで眠れるんですね。嬉しい……!
二人が一番近くの宿場に到着したのは、日もとっぷりと落ちた夜半に迫る頃。宿の食事提供が終わる、ギリギリの頃合いだった。
「メシに間に合って良かった。取り敢えず腹に詰め込んでおこうぜ」
「はい、では遠慮なく……いただきます」
二人のテーブルに並ぶのは、焼き鳥串に細切りの揚げポテト。そしてチーズのたっぷり乗ったピザと、山盛り野菜サラダ。完全なる居酒屋メニューなのは、この宿が夜は酒を提供する飲み屋になる為だ。
「うっ、うぅ……っ! おにく、おいしい……久々の、お肉……!」
「何も泣かなくても……おいメル、慌てなくて大丈夫だからな。落ち着いて食えよ」
宿場までの移動中、二人は自己紹介を済ませていた。
テオは冒険者パーティーのポーター(荷運び役)をしていたが、一念発起して独立。駆け出しの冒険者をしていること。
メルルゥはハーフのアルラウネで、自分で調薬したポーションを売り歩き生計を立てていること等々……雑談も交えての情報交換だ。
「しかしメルが、ハーフ・アルラウネとはねぇ……珍しい髪色だから亜人系かなーとは思ってたけど」
ジョッキのエールをぐいっと呷り、テオが彼女を見やる。少しパサついたメルの髪は明るい緑色で、朝露に萌える木々を思わせた。
「もぐもぐ、はふはふ……んむ、むもっ……」
「いいよ、喋るのは後で。焼き鳥まだ食うだろ? すいませーん、あと5本追加で!」
店員に串の追加を頼み、更にエールを一口。植物系のモンスターとして有名なアルラウネだが、モンスターだからと言って人間と敵対しているわけではない。彼女の両親がそうであるように知的で人型のモンスターが、異種族と愛を育んで子を成す例も、そう少なくはないのだ。
「もぐもぐっ……ぷはっ! そうなんです、純粋なアルラウネなら少しくらい食べなくても、水飲みながら土に埋まってお日様の光を浴びてればイケるんですけど……もぐもぐ……私はハーフなので……ぱくぱく」
普通に食べる必要があり、ここしばらくちゃんとした食事を摂っていなかったそうだ。
しかし、あれだけのポーションを自力で作成可能なのだ。露天で直接販売せずとも問屋にでも売れば……と尋ねたのだが、何かしら事情があって問屋に持ち込めないらしい。
「だからテオさんが沢山買ってくれて、すごく助かりました。改めて、ありがとうございます」
丸眼鏡を直しつつ笑みを浮かべたメルルゥに「どういたしまして」と軽く返す。
「ま、どっちかって言うと……こちらこそ、って感じなワケだしな」
「……?」
分かっていない様子でメルルゥが小首を傾げる。
そんな彼女へ何でもないと告げて、テオは残っていたエールを飲み干した。
「よっし、じゃあそろそろ寝るかぁ! 明日は早いぞぅ!」
「えへへ……私も今日はベッドで眠れるんですね。嬉しい……!」
「えっ? い、いままで何処で寝てたの……?」
そんなやり取りの後、夫々に就寝。
テオは確実な手応えを。
メルルゥは満腹のお腹と柔らかなベッドの感触を抱き、安らかな眠りについた。
そして翌日。
二人は昨日と同じようにダンジョン前で露天を開き、チラホラと訪れる冒険者たちへ1円ポーションを販売する。
そして二日が経ち、三日が経ち。迎えた四日目。
その変化は、訪れたのだ。




