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黄金の雫と賢者の秤 ~1円ポーションから始める弱者救済マーケティング~  作者: かっぷ


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3/7

3:お一人様、三本限り!

 ポーション全部とは言ったものの、残らず全部買い上げるには手持ちが厳しい。そこで取り敢えずポーション100本分、代金にして一万円分をテオは購入した。

「こっ、こんっ……こんな大金……ッ!!」

 一万円を手にしたメルルゥが小刻みに震えている。

 まぁ確かに、それなりの金額ではあるが……十代後半であろう彼女の年齢で、この反応。これまで一体どのようにして生活してきたのか。

 しかし彼女が驚くのは、ここからだった。

「なあ、しばらく店番させてくれねぇか?」

「へっ? 別に構いませんけど……って、ちょっ……!? ど、何処へ……?」

 メルルゥの了承を取るや否や、テオは露天用のゴザを引っ張って、ダンジョンの入口間際にまで移動した。

「あっ、危ないですよ、そんな近く! モンスターが出て来たらどうするんですか!?」

 彼女が言うようにダンジョン出入り口の直近は、たまにモンスターが顔を出したりするので中々に危険だったりする。しかしテオは「出て来たら逃げようぜ」と全く気にした様子もない。

 この時点で割とびっくりしていたメルルゥだったが、彼女の驚きは更に加速する。

「うちの看板に何を……ひぅっ!? い、1円……ポーション!?」

 メルルゥが書いた看板の上からテオは「爆安! 1円ポーション!!」と書かれた板を張り付けたのだ。

「ま、待ってください! そんな事したら全然儲けが……!」

「売るのは俺が買い上げたポーションだから別に構わないだろ? ほれ、お客が来たみたいだぜ」

 テオが顎先で示す先に、冒険者と思しい一団が見えた。

 戦士、魔法使い、僧侶、盗賊のオーソドックスな構成で、あまり使い込まれていない装備品から想像するに、ちょっと経験を積んだ初心者であるらしい。いつも同じ狩り場ばかりでは飽きるから、今日はちょっと気分を変えて遠出してみよう……といった所か。

「こんちわ、お客さん。消耗品は足りてます? ポーションとか如何ですか」

「へぇ、こんな所に露天なんて珍しい……えっ、ポーションが1円?」

「嘘だぁ、本当にぃ!? 書き間違いでしょ?」

 テオの呼び声で足を止めた冒険者一行は、1円ポーションの看板に惹かれて露天に集まった。

「嘘じゃなっスよ! いまオープニングセールやってまして。お一人様三本限り、1円で提供させて貰ってます!」

「うぉ、マジか……安過ぎだろ、品質とか大丈夫なのか?」

「品質云々以前に、三本買っても3円でしょ? それくらいなら捨てても惜しくないし……試しに買ってみる?」

 そんなやり取りの後、合計12本。12円分のポーションが売り渡された。

「お買い上げ、どうも! 探索、お気を付けて!」

 マジで買えちゃった、と怪訝そうな顔でダンジョンへと潜って行く冒険者一行。それを見送って、テオは「よし」と笑みを浮かべる。

「よし、じゃありませんよ……大赤字じゃないですか。普通に売ったら1200円になるのに……」

「普通に売ろうとしても、今まで売れなかったろ? あれで良いんだよ」

 微妙な表情を見せるメルルゥに平然と返し、テオは売れたポーションを補充する。だが敢えて、ちょっぴり雑然とした風に陳列した。

「もっとキレイに並べた方が……」

「いいから、いいから」

 並べ直そうとするメルルゥを宥め、店番を続けること暫し。

 もう一組、別の冒険者たちが訪れて先と同じようなやり取りをして、上限まで購入。今日のお客は、ここまでだった。

「さて、そろそろ引き上げるか」

 日が傾き始めた頃、テオは腰を上げて帰り支度を始める。メルルゥもそれに倣い、荷物を片付け始めた。

「店番、譲ってくれてありがとな。良かったら一緒に晩飯でもどう? 奢るからさ」

「えっ……いいんですか? あ、あの……是非っ!」

 思いのほか食いつきが良いメルルゥに少し驚いたテオだったが、それも僅かな暇の話。

「荷物、手伝うよ」

「ありがとうございます、助かります……ポーション、すごく重くって……」

 どうやって持ってきたんだよと思いつつ、大荷物を抱えた二人はダンジョン前を離れ、帰路についたのだ。

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