追放された無能で怠け者の聖女の話
「異界の聖女キミコは歳入を二倍にした。しかも、増税無しだ。更に貧民救済事業も軌道に乗っている。
たいして、我国の聖女エマはどうだ?ただ祈る事しかできない。慰問することしか出来ない。言われた事しかできない無能聖女だ。
諸君、どっちが王太子である我の婚約者に相応しいであろうか?」
「「「「キミコ様にございます」」」
王宮でゲルナー王太子殿下の断罪が始まったわ。
隣には異界から来られた聖女キミコ様がいるわ。
黒髪を肩まで降ろし。賢そうなお顔だわ。
実際に異界の知識を元に数々の政策を立ち上げ。
ついに、歳入が二倍になったわ。
「エマ、何か弁明があるか?」
「ございませんわ・・・」
「なら、元の孤児院にでも戻るが良い。いや、国に聖女は2人はいらない。絶海の孤島で自らの無能を反省せよ!」
「承りましたわ」
「全く、無能で怠け者の聖女であったな!」
「「「プゥ~クスクスクスクス~~」」」
「言い当て妙だ。無能で怠け者聖女!」
こうして、私は島流しになったわ。王国本土は見えるけど、潮の流れが激しくて地元の漁師さんでなければいけない島。
こんな島でも人は住んでいる。私はここで小さな女神教会のシスターになったわ。
「エマさん!結婚して下さい!」
「ごめんなさい」
「うわ。ハンス、即答されてやんの」
「ウエ~ン!ウワ~~ン!」
漁師さんに求婚される毎日を送る。
私は王国本土に向かって祈りを捧げるわ。
二年間平穏無事に住んだら、王国からの使者が来た。
村人達は集まり。使者に話しかける。
「何だ。何だ」
「まさか・・・処刑ないよな。しても意味ないよ。力の弱い聖女だもの」
「御使者様、この女、ただ、ボウとしているだけで謀反とか絶対に考えていませんよ」
村人の私への評価はとんでもないようだ。
私は王国の聖女の地位がなくなったので、カーテシーで出むかえた。
「御使者様、遠路はるばるご苦労様です」
「うむ・・王命である。王国に帰っても良いぞ!」
「ええ、そうですか?」
「五分で支度して舟に乗れ」
「いいえ。帰りませんわ。だって、私はここのシスターですもの」
「な、何だと、王宮に帰れば贅沢な食事と豪華なドレスを与えるとの現国王ゲルナー陛下のお言葉だ!」
すったもんだをしたあげく、帰ってもらった。
「聖女様のお好きなあら鍋です。お食べ下さい」
「まあ、頂くわ」
ここのお料理、魚の切り身を野菜などと交ぜて作る料理は絶品だ。
「美味しいですわ」
「聖女様のお気持ち嬉しく思います」
「ずぅ~といて下さい」
このお料理が好きだから王宮に戻りたくないわけではあるのが辛いところだ。
何故王国は無能聖女と烙印を押した私を呼び戻そうとしたのか。
だいたい分かるが、
次の使者の口上ではっきり分かった。一月で来たわ。
「王命である。エマには王国聖女の称号を付与する。王宮に戻ることを許可する」
「・・・え、キミコ様がいらっしゃるのではないですか?」
「・・・・・」
無言だ。おそらく・・・
「聖女キミコ様は急病で逝去された」
と使者は言うが信じられない。
「聖女なのに?病気?寿命以外で亡くなることはございませんわ。それか・・・謀殺かしら・・」
使者の眉毛がピクッと動いた。
処刑されたのね。
ゲルナー陛下は王太子時代からプライドが高い。
私に戻って来てくれとは言えないのね。
だから断った。
「・・・そうですか?分かりましたわ。でも、王宮はまだ存在しておりますか?」
「はあ、だから必要なのだ。無能でも飾りは必要だ」
しまったわ。使者を怒らせたわ。
「もう良い。王命は自発的に王宮に来させよだ!捕まえろ!」
「「「畏まりました」」」
騎士達に捕まったわ。
自発的に来させるなんて・・・それ自発的かしらとのんびり考えていたら。
漁師さんたちがサボタージュしてくれたわ。
「舟を出せ!」
「しかし、御使者様、今は潮が悪いですぜ。ほら、大きな渦巻きが三つだ。間違いなく飲み込まれぜ」
「な、何だと!」
「・・・来る前にいったはずですぜ。後、半月待ちなさい・・」
なんやかやあって、その隙に私は助けられたわ。
使者を穏便に帰そうと思ったが帰らない。
「もう、王国はダメだ・・・」
使者の話だと、キミコ様の改革は計画書だけの話だった。
穀物法は、国が農民から安く買い上げ高く売る。
物価の統制、品物は国が決めた価格以下で売る。
様々な物を公売とする。
これは実質の増税だわ。
更に貧民救済事業は貧民に金を貸し付ける。
しかし、ノルマ化したせいで、役人達が必要のない者にも貸し付けて貧しい者は金利を払わなくいけなくなって更に貧しくなった。
取らぬ火トカゲの皮算用で魔族に戦争を仕掛けたから前線を維持できずに魔族に侵食されている。
私は慰問をしたおかげでこうなるとだいたい分かっていたわ。
使者と騎士たちは漁師の下働きとして村に留まることになったわ。
また、数ヶ月後。3回目の使者が来た。
お爺ちゃんだ。
「王宮役人のシルバーと申します。エマ様に申し上げます。陛下はキミコ様の改革を元に戻す決断をされました。是非、キミコ様の改革は間違いだったと宣言を頂きたいと陛下のお言葉です」
この方は王宮の古参の役人で・・・確かキミコ様の改革には慎重な意見を言っていた方だわ。
「これが陛下の計画書です」
「そう・・・」
読ませてもらったわ。
「宣言を出せませんわ。塩の公売は残した方がいいですわ」
キミコ様の改革で台頭した勢力もあるわ。今、元に戻したらその勢力からも支持を得られないわ。
折角、ゴチャゴチャにしたのだから、変えなくても良い事は変えないべきと使者に言ったわ。
私は陛下の計画書に修正をしたものを渡したわ。
「左様ですか・・」
「ええ、陛下は王太子時代から部下の意見を一部変えて実行する癖がございました。策は聞くか聞かないかどっちかにするのが王族たる者の資質だと愚考していますわ・・」
「その通りですが、当職はそれを判断する職責にございません」
「なら、この島に残れば如何ですか?」
「いえ、魔族と交渉する者も必要でしょう」
お爺ちゃんは帰って行った。
それから一年もたたないうちに対岸に火の手が上がる。
魔族軍がここまで来た?それとも反乱軍?陛下は私の策を受けずに政策を実行したのね。
たまに来る商人から王国は魔族と反乱軍で無政府状態に近いと聞いたわ。
村人たちは騒ぐわ。
また、風の噂が入って来たわ。
王都は占領され王族は行方不明。
王宮に残ったシルバー卿が魔族と交渉している。
シルバー卿はあのお爺ちゃんだろう。
島は大騒ぎになったわ。
「大変だ!自警団の結成だ」
「どうしよう。俺たちも戦うぞ」
「「「聖女様!」」」
皆、私の元に集まる。
だから言って差し上げましたわ。
「魔族はここまで来ません。海の魔物は数が少なくこのような海域に来ないと歴史が物語っていますわ。
魔王軍に至っては舟で海を渡る発想そのものがございませんわ」
実際に魔王軍は来なかった。
聞けば、王国は農民反乱なども起きて魔女の鍋状態だったそうだわ。
下手に手を出すと・・・・
「危険だわ」
と思ったら。
王国の反対側の海から巨大な軍艦が数多く見えた。
艀に乗り使者が来た・・・いえ、あれは勇者様だわ。
「私は勇者アローンです。人族軍による奪還作戦が開始されます。どうか、エマ様にいたっては私の隣で旧王国の旗印になって下さい」
何ともまるで戦後の国土切り取り政策が見えてくるようだ。
しかし、あのお爺ちゃんが心配でもある。
「行きますわ・・でも、本当に無能ですわ」
「無能が無能とは言いませんよ。あの計画の修正案見事でした。エマ様の計画の修正案見事だと各国の文官達が言います」
「はい・・・何故?」
「シルバー卿がその計画の修正案の写しを各国に渡し。政策能力ありと次期王妃に相応しいと評判です」
はい?まさか、私ははめられたのかした。
あのあら鍋が食べられなくなるのかしら。
「さあ、お手を取って下さい。軍艦までエスコートします」
私は行くことにした。
だって、無能で怠け者の聖女だもの。
流される方が楽だわ。
これは決してアローン様が素敵で誠実そうなお顔に釣られたのではないわ。
最後までお読み頂き有難うございました。




