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3. 聖剣とペンダント 二人の思い出

 タリスは、長老と祭壇に向かう間終始無言だった。

 彼は元来人見知りをする性格だったし、しかも、すぐ先に自分の未来を左右する試練が待ち受けていると思うと、胸がドキドキして、何かを口に出そうとしても声にならなかったからだ。


 ジャコモもそのことを察してか、タリスに話し掛けようとしなかった。

 

 しばらく歩き続けるとやがて村を出た。村を出ると二人は北へと進んだ。そうして真っ直ぐに歩いて行くと、目的の洞窟が見えて来て、それはもう目の前にあった。


 洞窟の内部には水が流れており、ところどころに生えたシダ植物が静謐な雰囲気を感じさせる。しかしその眺めを楽しんでいる余裕もなく、少し歩くだけですぐに行き止まってしまった。


 長老が何やら壁をいじると、そこから先にさらなる道が現れた。突き当りに見えた壁は、聖剣を守るためのカモフラージュだったのだ。


 隠された扉を開けた二人はさらに奥へと進んだ。そこにはもう水は流れておらず、ただ苔ばかりが目についた。普段出入り口が塞がれているせいだろう。ひどい湿気だった。


 「もう少しだ」そうジャコモが呟いた。


 それからすぐに最深部に辿り着いた。そこにある聖剣を見てタリスが、「綺麗だ」と言った。

 それを聞くと長老は満足げに頷き、


「じゃあタリス、その剣を持ち上げるんだ」


 と言った。


 「うん」と答えタリスは祭壇へと近づいて行った。


 それから聖剣に手を伸ばした。


 彼は、ゆっくりとそれを手に取った。そうして、自分が竜の騎士であることを証明して見せた。


 タリスの手の中で光り輝く聖剣を見て、


「そうか、この子が。……タリス、もう良い、剣を戻しなさい。帰ってお父さんを喜ばせてあげよう」


 そうジャコモが言った。



 タリスと長老が洞窟に入った頃、ファルガは椅子に座るリディアの隣で所在なさげにしていた。


 彼は落ち着きなくあたりを見回し、立ち上がり、座り、それを繰り返していた。


 しかし、ある時ファルガの動きが止まった。


 リディアが立ち上がったのだ。彼女は何かを思い出したかのように、


「これは……ああ、そうだ」


 と呟き、階段へ向かった。


 階段まで来ると彼女は一階へと降りた。

 

 ファルガはリディアの後について来ていたが、彼はずっとリディアが転びはしないかと心配していた。

 しかし彼女は、子供らしからぬしっかりとした足取りで応接間まで来た。


 そして、机に置かれた淡い青の宝石が付いたペンダントを手に取った。


 その瞬間、ペンダントから光の柱が立ち昇り、村中を明るくした。

 ファルガはその一部始終を見ていた。驚いた彼は、口の中でもごもごと何かを呟いた。



 しばらくしてタリスとジャコモが帰ってきた時、リディアは既に眠っていた。


「ファルガ、さっきな光は?」と、ジャコモが尋ねた。


「それが、いえ、何というか、リディアがそこのペンダントを手に持ったかと思うと、突然」


「ふむ、やはり……。すると、竜の神子は存在したのか」


 そう長老が呟くとファルガが「竜の神子?」と言った。


「まあ、とりあえず座ってくれ。まったく、今日は説明する事が多いな」


 ジャコモは、皆が椅子に座るのを待ってファルガの質問に答えた。


「……ペンダントにエネルギーが蓄えられているというのは言ったな。それで、だ。竜の神子というのは、その蓄えられた力を、自由に取り出して使うことが出来る者のことを指す言葉なんだ」


「ですが、竜の騎士も、聖剣を使えばエネルギーを取り出せるって話でしたが……」


 慎重にファルガが質問した。


「いや、聖剣は封印をするためにしかペンダントを使えん。だが竜の神子はな、どんなことにでもその力を使えるんだよ。だから、例えば火を起こすだとか、傷を癒すだとか、そんなことが出来るわけだ」


 それを聞いてファルガは何やら感心したようだ。彼は、

「それじゃあ竜の騎士いらずですね」


 と言った。それを聞いてタリスは暗い表情をした。

 彼は幼く、まだ意味は分かっていなかったが、それでも、「いらず」という言葉が何となく嫌だったのだ。


「それがな、そうでもないんだ。確かに竜の神子が封印を施す事は不可能ではない。だがな、そうしようにも封印の法式が分からんのだよ。だから、実際に封印するためには鋳型となる聖剣が必要なんだ」


 ここでジャコモは突然話を打ち切った。彼にはまだ説明したい事があったのだが、タリスが疲れているのを感じたのだ。


 帰り際になってファルガが、「ところで、タリスはどうでしたか?」と聞いた。


 長老がそれに答えると、彼は非常に喜び、竜の神子の事はすっかり忘れて家路についた。


 その夜、布団の中でタリスは、楽しそうにその日の出来事を報告した。

 すると母は、それが自分の使命であるかのように、竜神についての話をした。

 

「タリス、お前が竜の騎士だったのなら、竜の神様についても知らなきゃいけないね。

 

 いいかい、竜神様はね、この世界を創った偉い御方なんだよ。それに、三百年前、魔界の扉が開いてオロチが出てきた時にも、竜神様はオロチを魔界へと追い返して下さったんだ。


 竜神様はその時の傷を癒すために寝ていらっしゃるけどね、そんな神様に仕えるっていうのは素晴らしい事なんだよ。


 だからね、タリス、竜神様が安心して寝ていられるようにするためにも、世界を守るためにも、騎士としての使命をしっかり果たさなければいけないよ」



 この時から現在、つまりタリスがフェーを拾うその日まで、彼は騎士としての務めを果たすべく、長老の下で勉学に勤しみ、ある程度の武術を身に付けた。


 リディアも同じように教育を受けたが、彼女の場合はそれに加えて、ペンダントの力を使いこなすための訓練もすることになった。


 そのため非常に忙しく、一時期はかなり辛そうにしていたが、努力のかいがあって今では人々の傷を癒したり、船の修理を手伝ったりすることが出来るまでになった。


 そうして、今や彼等は自らの使命に誇りを持っている。世界は平和で、封印が解かれるとは誰も思っていなかった。


 風の神殿を何者かが襲撃するまでは。


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