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18. 封印 

 ドミネの声を聞いたセシリアは家を飛び出した。竜の声は神秘的で、内に力と静寂を秘めていた。


 だけど、どうすれば良いのかしら。ウィッテがどこに住んでいるかなんて、私……。違う、彼は竜の騎士よ。だったら、ランス村に決まっているじゃない。でも、とっくに避難してるはずだわ。


 そう考えたセシリアの目の前に竜神が降り立った。地に降りたドミネは、その背からウィッテを降ろすと、セシリアに話し掛けた。


「私はこれからオロチの下へ行かねばなりません。私が戦っている間に、あなた達は封印を進めてください。お願いします」


 竜は再び飛び立った。セシリアが不安そうにウィッテを見る。


「大丈夫だよ。心配する事なんかない」 


 そう彼が言った。しかし、セシリアの胸にあるのは不安では無かった。孤独と悲しみの予感、それが彼女を苦しめていた。だが、それでもセシリアは微笑んだ。


そうして、

「まずは魔法石を取りに行かなくちゃね。まだアルテーシスにあるはずよ」

 と言って、傍にある転移装置に近づいた。二人が円形の台に乗る。


「二つの空間を重ねて、そうして物質を移す。良く出来た装置だわ」


 セシリアが呟いた。空間が重なると、魔力が濃度を増した。


 アルテーシスに着いた二人は地下に向かった。


「そう簡単に魔法石を持ち出せるかな……」


 走りながらウィッテが尋ねた。


「平気よ。警備はほとんど機械化されてるし、今なら人もいないわ。いつ落ちるか分からない島に残る人なんていないもの。島の中枢の機械だって、壊れるかもしれないでしょ?」


 地下に着くと、セシリアはパスコードを入力して扉を開けた。それから長い廊下を抜け、魔法石が保管されている区間に出た。金属製の格子を隔ててペンダントが見える。それに向けてセシリアは祈った。こっちに来て、お願い。魔法石が光り、宙に浮かぶ。そして、彼女の目の前に来たところで床に落ちた。


「うまくいったわね」


 そうセシリアは呟いた。そうして再び歩き出す。二人は元来た道を辿った。出口まで来ると、外に出るために再び文字を入力した。


 扉が開き、目の前には人が立っている。扉の向こうにいた男は驚き、「何をしている!」と叫んだ。

 しかしセシリアは動じず、


「あなたこそ何をしているの? 混乱に乗じてここの物を盗みに来たんじゃないのかしら」


 と、逆に問い質した。


「何を言うんだ。俺は保管庫の物を移しに来たんだよ。大事な物ばっかなんだ。このまま海に沈ませるわけにはいかないさ」


 その答えを聞くとセシリアは、「そう、なら良いわ。ごめんね、疑って」と言って歩き出した。

 しかし男は彼女を制止して、


「お前等こそ何をしていたんだ。そんなんでごまかせる訳ないだろう」と叫んだ。


 すると、セシリアは懐から魔法石を取り出し、男を脅した。魔力の無いこの場所で戦っても、あなたに勝ち目はないわよ。 


 二人は男の脇を通り抜けた。後ろから声が聞こえる。


「待て! お前たちはそれを使ってどうするつもりだ」

「封印するのよ、向こうの世界を」


 振り返らずセシリアが言った。


「封印? すると、闇が出て来た世界とこの世界との繋がりも消えるって訳か」


 そう呟いてからも、男は続けて、


「お前、闇が何だか知ってるのか? あれは魔力そのものなんだ。分からないのか。あそこを封じたら、闇どころか、魔力すらも無くなってしまうんだぞ。そうしたら人の叡智は、知識はどうなる。全てが無に帰してしまう。それでいいと思ってるのか!」


 と叫んだ。すると、セシリアは漸く振り返った。 


「あなたこそ分かっているの? このままではもっと多くの人が死ぬわ。確かに、魔力が無くなったら、これまで保存されてきた情報は消えてしまう。でも、だからと言って、救えるはずの人を見殺しにして良い筈なんてない! 生命は、何にもまして守られるべきなのよ」 


「しかし、情報だけじゃない、知識が、技術が失われたら、我々のしてきたことは何だったというのだ。……そうだ、これは淘汰だ。弱い者が死に、強き者が生き残る。そうして生物は発展してきたんじゃないか。今がその時なんだ。これを乗り越えて、魔力が濃くなった世界で人は生きていくんだ」


「あなたは、人と、他の種と、何が違うか考えたことある? 人は、高度に発達した言語を、言葉を持っているの。

 だから、私達は互いに理解し、愛し合うことが出来る。淘汰なんて無くても、人間は強くなれる。


 だから、今は皆で生き残ることが大切なの。


 私達は魔力に頼りすぎていたわ。あらゆる機械を魔力で動かし、病気や傷までも魔法で治した。

 その力の源を知ることなしに。そもそもがおかしかったのよ。どこから来るのか分からない力に全てを任せるだなんて。あらゆる情報をまとめて管理して、ちょっとしたメモも魔法で行う。魔に記憶させる。


 それはすごく便利なことだわ。でも、違う方法でも保存しておくべきだったのよ。私達の知識は、魔力が無ければ利用できないわ。


 伝えられたとおりに部品を組み立てても、魔が無ければ動かない。……いずれ失われていく文明だったのよ」


 行きましょう、ウィッテ。そう言うとセシリアは先に進んだ。考えを口に出したことで、彼女の中の迷いは消えた。そうよ、だから封印をするんだわ。何を犠牲にしてでも、成し遂げなければ……。


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