10. 破壊と破壊
次の日の朝、タリスが目を覚ました時には、パウエルは既に朝食の支度を始めていた。
早く目覚めた彼は、道具を使って火を熾し、簡単なスープを作っていた。
パウエルはタリスが起きたのを見ると、「おはようございます」と挨拶をした。タリスはそれに答え、それから欠伸をして、毎日の日課となっている軽いストレッチを始めた。
まず体を前後に曲げ、左右に捻った後、全身の関節を一つずつ伸ばしていく。それら一連の動作はさほど時間の掛かるものでは無かったが、彼のストレッチが終了する頃には、リディアとフェーも目覚めていた。
目を覚ましたリディアは、
「おはよう」と、三人に向かって言った。
皆がそれぞれ言葉を交わし合うと、四人はパウエルが作った朝食を取ることにした。
食べ始めてからしばらくの間、パウエルは何やら様子を窺っていた。しかし十分程すると、
「今朝、これからの事を考えたのですが」
と話を切り出した。
タリスは話を聞きたそうに頷いた。それを見て彼は自分のアイデアを述べた。
「まず、神殿にいる兵士たちの話によると、例の二人組は封印を解く際、神殿の最上階にある祭壇の前まで来てから祈りを捧げた、という事でしたね?」
タリスが頷く。
「ですから、赤い服の少女と黒マントの男のどちらが封印を解いたのかは分かりませんが、どちらにせよ、祭壇に近づかなければ封印を解くことが出来ないと言えます。
つまり、祭壇に近づけさえしなければ、封印も解かれる事は無いのです。そこで、私は神殿を壊してしまうのが良いと思います。瓦礫の中に埋まってしまえば、さすがに祭壇までたどり着くことも出来ないでしょうから」
パウエルが説明を終えると、リディアが、
「そんなことしたら封印が解けちゃうんじゃないかしら」と言った。
「そうかもしれません。ですが、このままでは、いずれ封印も解かれてしまうでしょう。なら、出来る事は試してみようではありませんか。彼等が封印を解く前に、我々の方が器を壊してみるのも一興です」
「そうですね。神殿は、とても人の力では壊せない程強固に造られている見たいだけど、力を合わせればなんとかなるかもしれない」
タリスが同意した。彼は何かやるべきことを見つけないと気が済まなかった。
しかし、ここでパウエルは、自分の考えに欠陥があることを発見した。
「そうでした。チクチャンの事を忘れていました。風の神殿を襲撃した『赤い服の少女』がチクチャンの事だとすれば、形を持たない彼女の事ですから、瓦礫の中だろうと入って行けるかもしれませんね」
「それは心配ないわ。だって、封印を解いたのは男の方だもの」
当たり前のことのように、リディアが言った。
「どうしてそう言えるのですか?」と、パウエル
「分からないけど、とにかくそれは確かよ」
そうリディアが答えると、パウエルは少し考えるような素振りを見せた。それから、自分に納得させるように、
「そうですか。まあ、もしチクチャンが封印を解けるとすれば、わざわざここの警備員を眠らせる必要も無かったわけですしね。彼女は空間を転移できるのだから。ここはリディアの言うことを信じるとしますか。良いですね?」と言った。
聞かれるまでもなくタリスの気持ちは決まっていた。フェーも、「うん!」と大きく頷いた。
そうなれば後は、今いる場所から最も近い神殿を探すだけだ。皆で地図を見た結果、目指すべき神殿はここより遥か南、いくつかの島を隔てたところにある、水の神殿であることが分かった。




