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ある日の雨宿り

作者: るーく
掲載日:2025/12/31

その話は、聞いたことがあった。


「私ね、結婚したい女性(ひと)がいるんですよ」


その人にどんな指輪を送ったらよいのか分からない。


「指輪を送る習慣というのが、外国であるらしいんですよね。でもどんな指輪を送ったらいいのかなあ・・・」


ああ、こんな台詞だったのね。


私は、聞いた通りに答える。


「真珠」


「え?」


「真珠の指輪がいいと思いますよ」


結婚を約束するときには、綺麗な宝石がついたのがうれしいんじゃないでしょうか。


台詞にはなかったから、誰もがそうとは言えないけれど、とは思ったけど言わなかった。


「真珠かあ、白いのがいいかもしれない。香奈さんにきっとよく似合う」


真珠が大好きだと言っていたもの。きっと喜んだのだろう。


「満天堂って、知ってます?あそこのウインドウに一つ飾られているんですって」


隣町の駅から少し歩いたところにある。と、私は言った。


そして、()は別の場所へ移転している大きな宝飾店の名前を教える。


「その店なら知っています。お嬢さんは物知りなんですねえ」


お・・・()は感心したように言った。


「いえ、私も人から聞いたんです」


突然降り出した雨を避けるように、シャッターの閉まった煙草屋の軒下へ駆け込むと先客がいた。


最初に気づいたのは、服。


古いアルバムの中でよく似た服を見ていたので、何やら起こっているとは思ったのだ。


一週間ほど前だっただろうか。

ある人から聞いた話と重なった。


先客の男性と会話をすると、あの話だとすぐに確信を持った。


だから、()()()()()()に話したのだ。


ふいに、雨宿りをしていた軒下に日が差す。


「ああ、雨が上がりましたよ」


空には虹が出ていた。

同じように、雨が降って。

同じように、虹が出たのだろうか。

お・・・男性と、私が見た虹は同じなのかと考え込んでいると、斜め前で声がした。


「これから満天堂に行ってきます」


ありがとう。にこやかに軽く会釈をして歩き出す。


「お気をつけて」


最後の仕上げと行こう。


まさか、それを言うのが()だったのが驚きではあるが。


持田仁(もちだひとし)さん」


「ええ!?」


仁さんは、若いおじいちゃんは驚いて振り返った。


内山香奈(うちやまかな)さんと、お幸せに」


私は道へ出て駆けだした。

おじいちゃんとおばあちゃんもいる、我が家へ向けて。

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