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ある日の雨宿り

作者: るーく

その話は、聞いたことがあった。


「私ね、結婚したい女性(ひと)がいるんですよ」


その人にどんな指輪を送ったらよいのか分からない。


「指輪を送る習慣というのが、外国であるらしいんですよね。でもどんな指輪を送ったらいいのかなあ・・・」


ああ、こんな台詞だったのね。


私は、聞いた通りに答える。


「真珠」


「え?」


「真珠の指輪がいいと思いますよ」


結婚を約束するときには、綺麗な宝石がついたのがうれしいんじゃないでしょうか。


台詞にはなかったから、誰もがそうとは言えないけれど、とは思ったけど言わなかった。


「真珠かあ、白いのがいいかもしれない。香奈さんにきっとよく似合う」


真珠が大好きだと言っていたもの。きっと喜んだのだろう。


「満天堂って、知ってます?あそこのウインドウに一つ飾られているんですって」


隣町の駅から少し歩いたところにある。と、私は言った。


そして、()は別の場所へ移転している大きな宝飾店の名前を教える。


「その店なら知っています。お嬢さんは物知りなんですねえ」


お・・・()は感心したように言った。


「いえ、私も人から聞いたんです」


突然降り出した雨を避けるように、シャッターの閉まった煙草屋の軒下へ駆け込むと先客がいた。


最初に気づいたのは、服。


古いアルバムの中でよく似た服を見ていたので、何やら起こっているとは思ったのだ。


一週間ほど前だっただろうか。

ある人から聞いた話と重なった。


先客の男性と会話をすると、あの話だとすぐに確信を持った。


だから、()()()()()()に話したのだ。


ふいに、雨宿りをしていた軒下に日が差す。


「ああ、雨が上がりましたよ」


空には虹が出ていた。

同じように、雨が降って。

同じように、虹が出たのだろうか。

お・・・男性と、私が見た虹は同じなのかと考え込んでいると、斜め前で声がした。


「これから満天堂に行ってきます」


ありがとう。にこやかに軽く会釈をして歩き出す。


「お気をつけて」


最後の仕上げと行こう。


まさか、それを言うのが()だったのが驚きではあるが。


持田仁(もちだひとし)さん」


「ええ!?」


仁さんは、若いおじいちゃんは驚いて振り返った。


内山香奈(うちやまかな)さんと、お幸せに」


私は道へ出て駆けだした。

おじいちゃんとおばあちゃんもいる、我が家へ向けて。

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