第8章:権力掌握への最終戦略(エリツィンの苦悩)
24:エリツィンの焦燥とプーチンへの依存
クレムリン エリツィン大統領執務室
1990年代末、ボリス・エリツィン大統領は、経済の長期低迷と、泥沼化したチェチェン紛争への対応から、国民の支持を急速に失っていた。健康も蝕まれ、彼の政治生命は風前の灯だった。
エリツィン(側近に、苦々しく):「我々は西側から『自由』を得た代わりに、『安定』を失った。国民は飢え、血を流している。このままでは、我々が守った『新しいロシア』が、再び混乱に飲み込まれる!」
彼は、自身の権力を維持し、「改革路線」を継承させるためには、国内を静かにコントロールできる「影の力」が必要だと悟っていた。その力こそが、FSB長官へと昇りつめたウラジーミル・プーチンが握る、ワグネル(プリコジン)を含む巨大な情報ネットワークだった。
25:影の会食とコントロール戦略の立案
ニュー・アイランド VIPルーム
エリツィンの特命を受けたプーチンは、定期的にプリコジンと秘密の会食を重ねていた。二人の間には、もはや「主人と給仕」ではなく、「同志と作戦参謀」のような空気が流れていた。
プーチン(冷徹に):「ジェーニャ。我々の敵は、クレムリンの外部ではない。『腐敗』したオリガルヒ、そして彼らに扇動される『裏切りのメディア』だ。彼らの『力』を、国民の目から見て『正当な形』で奪う必要がある。」
プリコジンは、進んでプーチンの「汚れた仕事」を請け負った。いや、考えるまでもなく、彼にはそれが自然にできたのだ。
世論のコントロール: プリコジンは、トロール工場の初期の技術を駆使し、メディアやインターネット上の「反エリツィン、反プーチン」の論調を巧妙に逆転させた。反体制派のリーダーに関するスキャンダルを偽装し、世論を分断したのだ。
抵抗勢力の排除: プリコジンの組織(後のワグネル)は、政治的な抵抗勢力、特にエリツィン政権の混乱を突こうとする強力なオリガルヒに対して、「経済的テロ」や「情報リーク」、そして「不可解な事故」を仕掛けた。
敵対勢力は、表立ってプーチンを非難する間もなく、政治的な力を失っていった。プリコジンは、「暗殺」ではなく「沈黙」によって、プーチンの道を清めたのだ。
26:エリツィンの決断と権力移譲の取引
プーチンとプリコジンの工作により、エリツィンは支持率こそ回復しなかったものの、「敵がいない」という政治的な安定を保つことができた。しかし、彼の身体的な限界はもはや覆せなくなっていた。
エリツィンは、プーチンの「非凡な能力」と、彼が持つワグネルという「影の力」を認めざるを得なかった。
エリツィン(プーチンに、最後の決断として):「ウラジーミル。私は、この国を君に託す。しかし、約束しろ。私と、私の家族の『安全』と、『改革路線』の継続を。」
プーチンは静かに頷きました。
プーチン:「ボリス・ニコラエヴィチ。私は、裏切りません。あなたと、あなたの成し遂げたことを、私は『守る』でしょう。そして、この国に『安定』を取り戻します。」
これは、プーチンがエリツィンから大統領の地位を引き継ぐという、歴史的な「裏取引」が成立した瞬間だった。プリコジンの働きによって築かれた「影の支配体制」が、プーチンをロシアの頂点へと押し上げたのだ。




