第23章:正義の行進(決別の号砲)
73:背後からの砲撃
場所:ワグネル野戦キャンプ(ウクライナ国境付近)
2023年6月23日の夕刻。バフムートの地獄を生き抜いたワグネルの戦士たちが休息を取っていたキャンプに、轟音が響き渡りました。それはウクライナ軍の砲撃ではなく、ロシア軍の陣地から放たれたミサイルと砲弾でした。
焼け焦げたテント、散らばる戦友たちの遺体。生き残った兵士たちの目に宿ったのは、敵への恐怖ではなく、「身内に撃たれた」という凄まじい絶望と怒りでした。
74:プリコジンの「父」としての怒り
プリコジンは、惨状を目の当たりにして完全に「一線」を越えました。彼にとってワグネルの兵士たちは、単なる傭兵ではなく、自分が刑務所から救い出し、共に血を流した「家族」でした。
プリコジン(激昂し、通信機を掴んで): 「奴らは一線を越えた……。ショイグは、バフムートで俺たちを殺し損ねたから、今度は後ろから撃ちやがった! 奴らはロシアの英雄たちを、まるでゴミのように掃除しようとしている!」
彼は、自分を使い捨ての道具として扱い、挙句の果てに「排除」しようとした国防省のやり方に、「元ごろつき」としての全霊の怒りを爆発させました。
75:プーチンとの完全な決裂
この瞬間、プーチンとの20年以上にわたる「影の契約」は灰燼に帰しました。プリコジンは理解していました。この砲撃がプーチンの直接の命令であろうとなかろうと、「主人は自分を守ることをやめた」のだと。
プリコジン(独白): 「ウラジーミル、あんたは間違った。無能な家来をかばうために、一番忠実だった狼を殺そうとした。……ならば、その狼が喉笛を食い破る番だ。」
シーン 76:宣戦布告——「正義の行進」の開始
プリコジンは再びカメラの前に立ち、世界を震撼させるメッセージを配信しました。その声は、かつての絶叫とは異なり、冷徹な殺意に満ちていました。
プリコジン(声明): 「これは軍事クーデターではない。『正義の行進』だ。我が軍の指導部が引き起こしている悪を止めなければならない。抵抗する者は誰であろうと、我々の行く手を阻むものは全て破壊する。2万5千人のワグネルが、真のロシアを取り戻しに行く。」
77:ロストフへの進撃
夜の闇の中、ワグネルの車列がエンジン音を響かせ、ウクライナ国境を越えてロシア本土へと逆流し始めました。彼らが最初に向かったのは、南部軍管区の司令部がある大都市、ロストフ・ナ・ドヌ。
兵士たちの顔には、迷いはありませんでした。彼らにとっての「神」はクレムリンにいる大統領ではなく、目の前で共に怒る「シェフ(プリコジン)」だったからです。




