第20章:裏切りの弾薬(バフムートの絶叫)
61:勝利の予感と、止まった砲声
場所:バフムート西端 廃墟の指揮所
バフムートの市街地は、もはや9割以上がワグネルの手に落ちようとしていました。凄惨な「肉の波状攻撃」の果てに、ウクライナ軍の抵抗線は崩壊寸前。プリコジンにとって、これは自身の「影の帝国」が正規軍を完全に超えたことを証明する、歴史的な勝利になるはずでした。
しかし、前線から不穏な報告が相次ぎます。
ワグネル砲兵隊長:「ジェーニャ、予備の砲弾が底をついた。昨日まで届いていた補給トラックが、今日は一台も来ない。本部に問い合わせても『在庫なし』の一点張りだ!」
プリコジンは即座に理解しました。これは単なる兵站のミスではない。モスクワによる「兵糧攻め」だと。
62:ショイグとゲラシモフの恐怖
場所:モスクワ 国防省ビル
ショイグ国防相とゲラシモフ参謀総長にとって、プリコジンのあまりの活躍と、国民からの異常な人気は、自分たちの地位を脅かす「クーデターの予兆」に他なりませんでした。
彼らの冷徹な計算: 「バフムートを攻略させても、その功績をすべて彼に持たせるわけにはいかない。ワグネルが強くなりすぎた。今ここで彼らの勢いを削ぎ、『弾薬不足で勝利を逃した無能な軍事会社』というレッテルを貼らねばならん。」
彼らはプーチンの沈黙を「承諾」と受け取り、ワグネルへの弾薬供給を組織的に遮断し始めたのです。
63:歴史に残る「絶叫」
場所:積み上げられたワグネル兵の遺体の前
2023年5月。怒りに震えるプリコジンは、スマートフォンのカメラを自分に向けました。背後には、その日に戦死したばかりの数十人の兵士たちの無残な遺体が並んでいました。
プリコジン(血管を浮き上がらせ、叫ぶ): 「ショイグ!ゲラシモフ!弾薬はどこだ!!!」
「こいつらを見ろ!奴らは今日死んだばかりだ!お前たちが豪華なクラブで椅子に座り、自分の息子たちがYouTubeで遊んでいる間に、こいつらの親は子供を失ったんだ。お前たちの手元に弾薬があるのに、俺たちに渡さないからだ!!」
この動画は、SNSを通じて瞬く間に世界中に拡散されました。これはもはや軍事的な不満の表明ではなく、国家権力に対する公然たる宣戦布告でした。
64:英雄か、反逆者か
この瞬間、ロシア国内の世論は二分されました。
国民の目: 「よく言った!腐敗した将軍どもに真実を突きつけたのは彼だけだ!」
クレムリンの目: 「彼は一線を越えた。もはやコントロール不可能な怪物だ。」
プリコジンは部下たちの圧倒的な支持と、勝利への執念を武器に、ついにバフムートの完全占領を宣言します。しかし、その顔に勝利の喜びはなく、「自分を裏切ったモスクワ」へのどす黒い復讐心が燃え盛っていました。




