朝の三時
※この作品には自殺未遂、自傷行為を思わせる描写が含まれます。
15歳未満の方や、精神的に不安定な状態の方は閲覧をお控えください。
また、本作は一部フィクションを含みます。現実の人物・団体とは一切関係ありません。
またこの作品で心身に負担が生じた場合でも著者は一切の責任を負いかねますので、あらかじめご了承ください。
毎日首を釣って死にたいと思う。ほどよく都会のアパートの三階の一室に70kgの肉がぶら下がると思うとなんだか不思議な気分になる。しかし実行に移せない俺はきっとその程度なのだろう。
俺は四人の兄弟の三番目だ。物心がついた時から喧嘩の絶えない家だった。母は教育に無関心な父、母方の両親、明確な進路が決まらない兄と代わる代わる毎日喧嘩していたのだ。それでも母は強かった。だらしないほとんどの家族の中で、できる限りの愛情を注がれたと思う。それを少ないと一蹴するのは最低なことだと思っていた。まあそんなことはどうでもいいのだ。結局は自分次第。世の中の家族はみんなそんな感じだとわかっている。死にたいと思う原因はきっと他にあるのだろう。なぜ死にたいのかすらわからない俺はきっと頭の悪いゴミなのだろうか。
だめだ。
こんなことを考えてしまってはもっとバカになってしまう。気分転換に散歩にでることにしよう。あの古びた漁港にでもいってみようかな。行く場所もなくあてもない旅にでもでてみたい。そんな風にいつもより軽く感じる足取りで玄関に向かう。
朝3時の空気は好きだ。ほどよく冷たく、鼻にさす感触が心地よい。夏真っ盛りなこの時期にはこの時間だけが癒しである。古びた漁港までは歩いてそんなにかからない。
歩く道中は道端の家屋を見るのが好きだ。俺の住む地域はつい最近少し大きめの地震があった。俺の住むアパートは大丈夫だったが、埋め立て地であったとこにある家屋は家が傾いていたり、コンクリートの壁が飛び出ていたり、すごいとこだと一階が潰れているとこがあるもんだ。道路は地割れがひどく、木でできたあの橋は崩れて川に浸ってしまっている。
あぁ、なんて儚いのだろうか。
この頃私は廃れた家屋や、ボロボロな船、古びた路地のようなものにすこぶる魅了されていた。日々廃れた人間関係の中で暗中模索してる日々が全て無駄になって崩れるみたいで。その儚さが心地よい。あぁ素晴らしい。気持ちよい。心踊る。まさに欣喜雀躍。誰にも邪魔されたくない。端から見たらこの感情は狂喜に感じとれるかもしれない。どうでもいい。この感情は俺一人が持っていれば良い。誰にも共有したくない。この瞬間だけ俺は生を実感できる。さっきまでの部屋での憂鬱感が嘘のように、心地良い。あぁ、このまま、ぼろ船にのって海にでて誰もしらない海のど真ん中で干からびたい。または誰の感情も感じないとこで寝転んで風を肌で感じて、トンボなんか飛んできて鼻先にとまったら最高だな。
あぁ。
そんなことは実現できない。そんなことはわかってる。はぁ。つかれたな。できもしない、やりもしない、実現できない、私の妄想は良いも悪いも脳に影響を与えているのは実感した。こんなことは無駄だだとわかっている。死にたいだとか、先の妄想を実現したいとか。したいしたいばっかりだ。
無駄だった。
全部無駄なんだ。
あ、
あ、
かえろう。
帰り際、あの崩れた家屋に一代のトラックが入っていった。工事の音が耳に刺さる。きっと明日には崩れる前に戻っているんだろう。今朝までは同じだったのに。漁港に向かう時は下り坂、帰りは上り坂。やっぱ来なければよかった。海の音は工事の音にかき消され、耳に入るのはうるさい音色。今なら気軽に死ねる気がする。
ようやくだ。
早く家に帰りたい。
今が何時かすらわからないが、太陽が頭上まで来ている。照りつける太陽が頭を焦がし、考えることができない。あたまがいたい。こんなことなら昨日少しでも寝れば良かった。寝れればなのに。結局寝れなかったからあんな遅くまで起きていたのに。
部屋に着いた。あぁようやくだ。
三階のベランダから身を乗り出す。
この高さなら死ねないか。
部屋に戻って包丁を手にもつ。
やっぱ、痛いのは嫌だな。
どうせ死ぬならサクッと死にたい。
痛いとか辛いとか考えることもなく。
首吊りならサクッと死ねるか。
大学の入学式ぶりにネクタイに手を伸ばす。
天井はかける場所が見つからない。
大きめのドアの蝶番になっている上にかけることにした。
あぁ、やっとだ。死んだら誰かが俺を工事してくれるだろうか。
首にネクタイを通す。
こんなときどんなことを考えるのだろうと普段考えてはいたが、案外地味なもんだな。
何も考えられないみたいだ。来世に期待何かももてない。
早く死のう。
首にネクタイが食い込んでくる。
あ。
息ができない。
首吊りとはこんな辛いものなのか。
苦しい。
痛い。
もがいているとドアが外れてしまった。
あぁ。痛かった、つらかった、なんでだよ。なぜか自然と目から涙が、鼻からは鼻水が溢れでていた。冷や汗は全身に周りグチャグチャになった服が肌に張り付いている。死ねると思ったのにな。死ぬのは簡単だと、どこか先入観があった。ごめんなさい。誰に謝っていてるのかわからないが言葉が溢れでてしまう。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。あぁ、生きるのは辛いけど死ぬのも辛い。
一通り泣きやみ疲れた俺はベットへ向かう。眠いな。ベットへ向かった俺は寝転ぶ。枕もとに置いてあるスマホには知り合いからのメッセージが届いていた。「暇だからカラオケいかね?」。あぁ。行きたい。生きたいよ。ありがとう。俺は誘ってくれてありがとうと明日ならという旨を伝え、深い眠りに落ちた。みた夢はあんまり覚えてはないけど、暖かかった。ありがとう。何故か次の朝になって目が覚めた時、ある言葉がまた溢れてしまっていた。
※この作品はフィクションが含まれていますが、作者自身の心情や過去の体験に触発されてかかれた部分もあります。
この作品は私の感じている日々の気持ちや感性が溢れてできたと思っています。もし日々のなかで不安や不満、複雑な人間関係で悩まれている方が、この作品で少しの希望をもたれたら嬉しいです。