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地下の倉庫

※ 暴力、性加害等の表現がございます。


 荒くれ者たちに抱え上げられ運ばれたアルマは、地下の薄暗い倉庫らしき部屋に放り投げられた。床に打ちつけられた身体が痛む。

 三人の男たちがアルマを取り囲んで見下ろしてくる。


「なんだ、殺しちゃだめなのか」

「解毒方法を喋らせろと言われた」

「馬鹿馬鹿しい。そんな面倒なこと引き受けるほどの報酬は貰ってねえ」

「いいじゃねぇか、適当にゆっくり嬲ってりゃいいんだろう。あの男、ムカつくことばかり言いやがって。間に合わなくて死ねばいいんだ」


 けらけらと笑う男たちには殺意は見られない。先程よりは命の危険は遠ざかったようだ。

 子爵は息子の容態にかなり取り乱していた。アルマたちを解放する可能性はゼロではないだろう。あとは賭けだ。子爵が折れるのが早いか、息子が持ち直すのが早いか。殺してしまっては交渉ができないので死なない程度を狙ったつもりだが、それも自信はない。


「軽く嬲るか。貴族の女とヤれる機会もそうないだろ」

「そうだな。あのいけすかねぇ辺境伯に、俺たちを真っ当に扱わなかったこと、後悔させてやろうぜ」

「あの役人め、あんな小虫には良い仕事を振るくせに、俺たちには土方しかないとか言いやがって。馬鹿にしてやがる」


 土方はとても大事な仕事だ。

 会ったこともないジグルドを悪様に罵る不愉快な男たち。こんな男たちにこれから犯されるのかと思うとうんざりした。

 この三人くらいなら同じように壊すこともできそうだったが、乱発しては子爵の息子に毒を飲ませたという嘘がばれる。交渉のカードを失えばエバたちを助ける手段が無くなる。


 後ろ手に縛られたままのアルマを男たちは面白そうに眺める。


「そう睨むなよ。可愛くおねだりすりゃあ、俺が良い思いさせてやるぜ?」

「あんたなんかとヤって良い思いができるわけないでしょ。豚の方がいくらかマシだわ。底辺の男が自分のセックスに価値があるような言い方するの、恥ずかしいからやめた方が良いわよ」


 言い終わらないうちに平手が飛んでアルマの頭を揺らす。


「調子に乗るな。お前の夫は随分と女を甘やかしてるみたいだな」

「そうね。無価値な男は殴らないと女も抱けなくて大変ね」


 今度は腹に蹴りが入った。


 媚びた方が良いのかもしれないが、アルマにはこんな男の対応を考えている余裕はなかった。


 エバは無事だろうか。

 師匠によく似たお母様は無事だろうか。

 優しそうなお父様は無事だろうか。

 アルマが師匠の弟子だったばかりに、危険に晒してしまった。


「せいぜい強がってるといい。お前の捜してる女も強気だったが、最後は泣いて謝ってきた。お前は何時間保つかな?」


「……………捜してる女………?」


 男の発した単語がアルマの耳に静かに響く。


 ざわりと身体中が総毛立つ。

 痛む腹を屈めて首だけを男たちに向ける。

 痛みで呼吸が荒くなる。


「―――エバに、なにをしたの」


「なにって、なあ? 旦那から預かってる女だから、丁重にオモテナシしてやってるのさ」


 男の卑猥な仕草に、腹奥からどろどろとしたものが湧く。

 怒りで視界が点滅する。


「………なんて、ことを………」


「あの女が心配か? 言っとくが、お前を誘き出す手紙を書いたら放してやるって言ったら、迷いもせずに書いたぜ。良い友達だなぁ?」

「普通の女が、あんたたちみたいな男に乱暴されたら、そんなことしょうがないわ。わたしを誘き出したんだから、約束どおりエバたちを帰して!」

「もちろんそのつもりだったが、あの女も満更でもなさそうだからなぁ」

「お前みたいな生意気な女じゃ後味が悪ぃ。後で口直しにまた可愛がってやるかな」

「今朝も兄貴がたっぷり可愛がってやってたし、そろそろくたばってるんじゃねぇのか」


 ぎゃはは、と下卑た笑いがアルマの耳に響き、脳を揺らす。

 それはこだまし、ごぽりと湧き出る黒いものに掻き消され、



 アルマの世界は一瞬、色も音も失った。



 ゆっくりと身体を起こす。

 不愉快なことを喚く男たちの後ろでずっと黙って座っている男。三人から「兄貴」と呼ばれるこの男がリーダー格か。アルマは用心深くこちらを見ているその男に向き直る。

 男はアルマの視線を受けて怪訝な顔をした。


 点滅する視界の中で不思議なほどに全てが明瞭で、なのに目の前で揺れる影が何の生き物なのか分からない。アルマはなんだか愉快になって、にっこりと笑ってみせた。


「―――こんな下品で汚い男の相手なんか、嫌よ。でも、お兄さんだったら好みだから、少しくらい相手してあげてもいいわ」


「なんだとこのアマ!」


 喚く男を無視してアルマはリーダー格の男に向かって大きく口を開けて見せる。流れっぱなしの鼻血が舌に垂れた。


「わたし、仲良しの姐さんたちにも上手って褒められるのよ。試してみない?」


 ちろちろと舌を動かして誘うと、男は嬉しそうに立ち上がった。不服そうな他の男を制してアルマの前に立つ。


「胆の据わった女だな。

 良い子にしてるなら最初は俺が優しくしてやるよ。良い思いができてるうちに、子爵への返事を用意しといた方が利口だぜ」


「ふふ、どうかな……お兄さんのが凄く良かったら、わたし、どうにかなって、うっかり喋っちゃうかも……」


 目の前の男の股間に首を伸ばしてキスすると、男はそそくさとズボンの前を寛げてアルマの顔を押し付ける。


「ほらよ、自慢の技で俺を満足させてみろよ」


 頭を押さえつけられたまま、焦らすように刺激する。男はアルマの頭を鷲掴みにして顔を上げさせた。


「そんなお上品なキスじゃ、勃たねえぞ?」

「お兄さん、固いんだもの。縛られてるから上手く届かないの。座って、もっとリラックスして?」


 にっこり笑って優しく諭すと、両手を後ろ手に縛り上げていることで安心しているのか、男は言いなりに椅子に腰掛けた。

 次第に呼吸を乱し始めた男がアルマの上着を剥ぐ。


「へっ、鼻血を垂らして縛られたまま、すげえ格好だな。好き物の女は嫌いじゃない」


 部屋に響く卑猥な音に、後ろで控えていた男たちが抗議の声をあげる。


「兄貴、ズリィぞ!」

「たまには俺たちも楽しそうな女とヤりてぇ!」


「まぁ待ってろ。順番に――」


 途端、部屋を揺らすほどの野太い悲鳴が響き渡った。


「…………お、……お、お、……」


 男が股間を押さえて床に崩れる。

 後ろの男たちがぽかんと立ち尽くす。


 薄暗い部屋で、蹲る男の下から黒い液体が広がっていく。


 上半身にその液体を浴びて赤黒く染まったアルマは、口の中の肉をベッと床へ吐き捨てた。


「―――二度と、エバに、こんな汚いものツッコむんじゃないわよ」


 慌てふためく男たちが黒い水溜りに駆け寄る。


「兄貴! 兄貴!」

「おい、お前! 祈祷師は魔法で怪我が治せるんだろ! 早く治せ!」

「元に戻すんだよ! 兄貴は、……兄貴は先週、惚れた女をやっとモノにしたところなんだぞ!」


「え? なんでそれで同情引けると思った?」


 きょとんとしたアルマの腹にまた蹴りが入る。身体が壁際まで飛んで動かせなくなったが、全く痛くもないのが不思議だった。


「てめえ! 早く兄貴を治せ! 輪姦(まわ)すぞ!」


「初めから輪姦すつもりのくせに。もげた兄貴さんを横目に、自分たちはおっ勃ててお楽しみとか、素敵な仲間ね。笑っちゃう」


 もう一度腹を蹴り上げられて、アルマの視界は暗転した。



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