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インサイドバーカー~謎のテスト部隊に選ばれちゃって、共同生活まで強いられて~  作者: 火山 竜之介


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13 クレイトン④ 君は静かな方が似合っているよ

 「それでねぇ、サッと背中を見せてメアリィの盾になってくれてねぇ」

 「あぁ~、男らしいところ見せられちゃった感じ?」

 「うんうん。それにその後ねぇ、僕以外の前でその顔禁止って迫って来てねぇ」


 興奮して話すメアリィと同じ調子で聞くアーシェ。


 「なんだ。お前たちそんなに仲が良かったのか」

 「捏造だ!」


 それを信じてしまいそうなヴォルテラに、きっちりと僕は否定した。



 寮での一幕だ。



 ヴォルテラの作ってくれた料理に舌鼓を打った後のこと。

 メアリィが待ってましたといわんばかりに今日のことを話し始めたのだ。


 既に自室で眠っているカルロとノルンはこの会話には入ってきていない。

 お子様がいなくなった辺りで話す辺り、なんともイヤらしい。


 「オレ以外禁止って、フィクションの中だけかと思ってたなぁ」

 「乗るな」


 へぇ……みたいなアーシェの感嘆に釘を刺す。


 「でもぉ、ホントに言ってくれたんだよぉ? あんなにキス直前まで顔を近づけて」

 「おい! やってないことまで捏造するのはやめてくれないか!」


 メアリィは悪ノリが過ぎる。


 「クレイトン静かに、ノルンが起きる」

 「なんで君はあの子の親みたいな立場なんだ!」


 カルロのことはどうでもいい辺り、ヴォルテラもちゃっかりはしているが。


 「けしからんとか言うタイプだと思ってたから、意外だわー」


 アーシェはここぞとばかりにからかってくる。


 ……全てが嘘でないのが、特に面倒だ。


 どれだけ話を膨らませようと嘘100パーセントなら聞き流せばいいが……

 自分の失言を元に弄られている以上、訂正できる所は全てしておかなくては。


 「人目につく中庭でそんなことする訳ないだろう。僕は少し落ち込んでいた彼女を励まそうとしただけで、決してやましいことは……」


 なんか余計に言い訳臭くなってないか、コレ?


 「え、メアリィって落ち込むんだ?」

 「隠そうとはしてるんだけどぉ、クレイトンくんにはバレちゃってるみたいでぇ」


 アーシェのわざとらしい合いの手に、これでもかとメアリィが乗っていく。

 赤く染めた頬に手を当てるだなんて、一体どこで学んで来るというのか。


 どうにかできないかと頭を抱えていると、不意にヴォルテラが「そういえば」と口にする。


 「クレイトン。どうして俺達のこといちいち彼だの彼女だの、よそよそしい呼び方をするんだ?

 いい加減、名で呼べ、寂しいだろう」


 う、うーん。それを何故今言うのか。


 彼に悪意がないのは分かるが、それを今言うのは作為的な気がしてならない。


 「隊長が一番距離があるように見えるって問題だろう?」


 ……それは確かにそうだが。


 「ひょっとして、俺達の名前を知らないのか?」


 そんなわけあるか。

 君がどれだけ本気で聞いてきているのかが分からない。


 「それ賛成~。ねぇクレイトンくん、あたしの名前を言ってみてよぉ」

 「耳元で言ってあげなよ。愛しのメアリィって」

 「誰が言うものか!」


 これ以上付き合っていたら恐ろしいことに話が繋がりそうだ。

 お子様達に倣って僕も自室に籠った方が良い気がしてきた。


 「まぁでも、名前の件は本当にヴォルテラに賛成かな?」


 アーシェがまとめるように、最後にそう付け足した。まぁ、考えておこう。

 一緒に暮らしているのに距離がずっとあるのは……問題だからな。


 「それにしても明日が対抗試合って、全然イメージ沸かないね」

 「うんうん。ほとんどアーシェちゃんとクレイトンくんが作戦考えてたから、メアリィ達まだ何もしてないって感じ」


 話が別方向にいって助かったが、そういうのには向いている人とそうでない人がいるので仕方がない。

 まぁ、メアリィが向いていないかと言われれば怪しいが。



 「僕らは攻め手(オフェンス)だ。数で劣る以上、守り手(ディフェンス)は圧倒的に不利だからな」



 ナンバーズ部隊の人数上限は8人。

 どの隊も例外なく規定数ぎりぎりに隊員を備えているが、十一番隊は唯一の例外といえるだろう。


 何故なら特化端末(イグドラ)の適性あっての集まりなのだ。


 今回はクレイトン達が勝手にルールを決めたので、こちらに有利な条件を設定した。


 戦闘場所は屋外フィールド。

 隊長が戦闘不能になれば負け、など人数差で差が生じないルールを選んだつもりだが……


 それがどうなるかは明日次第だ。


 「屋内戦にはしなかったんだねぇ、フラッグルールだし」

 「カルロの機動力は広い場所で使うべきだからね。それに総当たり戦だとジリ貧になったら落とされるし」


 アーシェは特化端末から屋外フィールドの全体図を開き、拡大して見せてくれた。


 「フラッグルールだと、ディフェンスは隊長とフラッグの両方を守る必要があるからね。

 反対にオフェンスの私達は、クレイトンさえ守ればどうにかなるし。

 なによりウチの強みはどこにも記録に残ってない事だからね、カルロやノルンの力は知られていると効果は半減するし、こっちから攻めるしかないよね」


 さっきまで人を弄り倒していた者とは思えない程、アーシェが流暢に話し始める。


 「向こうは機動力に長けた人が集まってたよね?

 どう考えたってそれ用のフォーメーションを組むし、連携の練度は圧倒的に向こうが上だもん、何年も一緒に戦ってる面子なんだから。

 ならこっちはかく乱して相手の陣形を乱して、突破力のある作戦でいっきにフラッグを奪取するしかないよね。こっちは意外と飛び道具的に使えるメンバーが揃ってるし」


 「そんなに上手くいくかなぁ?」


 戦う前からそんな調子でどうするメアリィ。

 まぁ、僕も一人ならそういう考えに陥りそうになるので、気持ちはよく分かるが。


 「大丈夫。正攻法でだってこっちはやれるもん。ね?」


 言ってアーシェは、隣に腰かけているヴォルテラの肩を叩いた。


 同じクラス、入学初日の騒動もあって二人は仲がいい。

 一方的に任された彼の方も、全く否定せず不敵に笑うだけ、うん。



 やはり、彼らの方がいいかもしれない。



 「ただ拡張連携機能(クロスオーバー・システム)は期待しない方がいいよね。

 あれ以降私とカルロが成功してないし、本番でアテにするには劇薬すぎるっていうか」


 「普段通りに立ち回るのだって大変なんだ。そこに、信用の出来ないものをプラスする。そんな曖昧なもの、作戦には入れられない」


 アーシェとヴォルテラは同調して、拡張連携機能(クロスオーバー・システム)を無いものとして扱っていた。


 守性科長曰く、深い信頼関係を土台にした力なのだとか。つまり、そうほいほい出来たら苦労はしない。


 それを聞かされた瞬間、既に発動した体験者たち(アーシェとカルロ)の顔はとても面白かったが、


 「何をもって信頼とするか、曖昧だよねぇ」


 メアリィがマグカップをすすりながらため息をついた。


 「けっこうみんなのこと信頼してるつもりなのになぁ」

 「形に出来ないものが土台って、かなり難しいよね」

 「それこそぉ、同じ隊でずっとやってた人の方が、データ取りやすいと思うけどなぁ」


 不満とまではいかないが……メアリィとアーシェが、どうしてなんだと頭を捻っている。


 と、そこでヴォルテラがじっとこちらを黙って見ていることに気がついた。


 ……君の見た目でそれをされると、緊張するんだが。


 「近い内に出来るようになるかもな」


 それをどうして僕に向かって言うんだ?


 妙に意味深な、いや彼は言うことのだいたいが意味深に聞こえてしまうだけか。


 「体を動かしてくる」

 「あ、私もー」


 ヴォルテラが席を立つと、アーシェも同じようについていった。


 動きやすいシューズに履き替えながらアーシェが話しかけ、ヴォルテラは軽い相槌を打つ。

 自室からフォトンギアと剣帯を持っていく辺り、軽くでは済まなそうだが。


 「あまり騒音を立てるなよ」

 「分かってるってー」


 言ったそばから騒々しく出ていった二人を見送る。


 騒がしかった広間で、急に温度が下がった気がした。


 同じく残されたメアリィのことを見る。

 彼女の雰囲気が少し落ち着いたものに変わったのに気がついた。


 「見た目でいうと一番あの二人がアダルティなのに、全然それを感じないね」


 それは、確かに。

 どちらもモデル顔負けの容姿だ。


 アーシェと会った時、女性と目の高さが同じになるだなんて初めてで驚いたものだ。


 「なんていうかさ、ずるいよね。全てを持って生れてきたって感じがして」


 それが何を意味するかは知らない。

 出会って一週間で何を知れるというのか、知った気でいれる方がおこがましいだろう。



 「だから努力して補うんだ。僕はそうやって憧れに食らいつく」



 いつものかどわかす微笑みはない。

 あるのは温度の低い、恐らく素に近いメアリィだった。


 「普段やっているじゃないか。同じだよ」

 「違うよ」

 「違わない。僕らは透き通った彼らに想いを馳せる同類さ」


 薄っぺらい、かな?

 でもいい。


 違うことで優劣なんて生まれないし、仮にそうでも劣等感が生む誇らしさだってあるはずだ。


 「君は静かな方が似合っているよ」

 照れるでもなく茶化すでもなくメアリィはじっとこちらを見つめてくる。


 そうだ、過剰に反応をせずとも、何とも言えない沈黙が良い時はある。

 常にそうあろうとする彼女にはこういう時間も必要だろう。


 それは僕もだ。

 常に優等生でありたいと願うが、同時にそうあれと期待もされる。


 だから、張りつめた感情をただ垂れ流すための時間は要る。


 今日で僕の信頼を得た君となら、それでも良い気がしたのだ。


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