【3】
放課後、下駄箱に行くと、何と啓が待っていた。
「あの…、一緒に帰りませんか?」
わざわざ待っていてくれたらしい。つれない対応をしたのに、めげた様子はなかった。めいの方が戸惑う。
「あの…、残念だけど…」
美紗子の言ったことを思いだしそうになり、顔が赤くなりそうになる。また拒否をしようとしたのだが、啓も負ける気はないのか、強引に手をとってくる。
「ちょっと!!」
「俺に付いてきて」
彼の手は汗ばんでいた。緊張か熱気のせいか、大きな手はすっぽりとめいの手を包みこんでいた。しかし、気持ちが悪いとは思わなかった。
ーどうしよう。どうすればいいのかなあ。
やり方が分からず、めいは頬を赤く染めたまま、仕方なく歩きだす。外は暑かった。アスファルトから熱が放出されている。
「…アイスでも食べに行く?」
啓から提案されたが、めいは横に首をふる。それよりも美紗子に怒られそうなので、しっかり聞くことにした。
「あたしが好きって本当?」
「うん」
すぐに即答された。めいの手から汗がでてくる。ここは思いきって、聞いてみることにした。
「あたしの赤ちゃんが欲しいってこと?」
「…は?」
啓がびっくりしたように振り返ってくる。めいのストレス発言に更に赤くなる。
「あの…、その…」
口をもごつかせ、手をあてる。日光は眩しく強いが、啓は爽やかな雰囲気だった。
「…誰から聞いたの?」
ようやく、出した言葉にめいは勇気を出して言う。
「どうなの?」
めいは足を止め、答えを求める。啓は手を強く握り返し、言ってくる。
「将来的にはそうなるかもしれない」
「えっ!? 本当に?」
「本当に」
2人は見つめ合う。太陽が真っ赤に照らし、影を伸ばす。周りは生徒たちが笑いながら、楽しそうに通り過ぎていく。
「…もしよかったら、これからお互いのことを知りませんか? そこから始めようかと」
「…それなら、その…」
めいも考え出す。それなら、悪くない条件だった。2人の将来はこれからだった。