第七話
セスさんが顔を出すとあっという間に城の中に入れてしまった。さすがは王族に仕えているだけある。きっとお偉いさんなんだろうなぁ。
咲夜はそのセスの後ろでひたすらに小さくなる。フードで顔を隠しこそこそと後をついていく。
この道中にしっかり食事を与えてもらったおかげで体力は徐々に回復していた。しかし格好は汚くよごれた白衣のままだし髪だってぼさぼさだ。
「セス・シグロイです。ただいま帰還しました。」
気配を消して後をついてくることばかりに集中していた咲夜だが、いつの間にか周囲には誰もいなくなっていた。
「入れ。」
中からの声を聞きセスが入ると、そこにはずらっと並んだ侍女さんたちとあの赤眼の男がいた。王弟殿下?だっけ?
殿下にフードを剥ぎ取られた咲夜は急に明るくなった世界に目を瞑る。上を見上げるとひたすらに高い天井に煌びやかなシャンデリアがぶら下がっている。
「歩けるようになったか。」
「おかげ様で。ありがとうございました。」
じっと殿下に見られながらかけられた言葉にとりあえず咲夜はお礼を言ってみる。視線が怖い。
「ちょっと身奇麗にしてもらえ」
そういうとどかっと椅子に腰掛ける。ぽかんとした顔で黙ってその優雅な振る舞いを見ていた咲夜だったが、ふと並んでいる侍女さんたちに目を向けると、美人さんたちが信じられないものを見るような顔で咲夜を見つめていた。そしてあっという間に拉致された。
侍女さんたちに着せられた服は白の簡素なワンピースだった。無論足は隠されているけど。
数人がかりで身体や髪を洗われた時には羞恥と恐怖で死ぬかと思ったがおかげで肌はさらさらになったし髪もしっとりしている。身体が軽くなった気がするしとってもさっぱりした。
侍女さんたちは何も言わなかったがやはり右目を見られていた気がする。一体何なんだろう?鏡とかないのかな?
そのまま侍女さんたちに連れられて部屋に戻ると、セスさんと殿下がなにやら話している。二人が揃うと圧巻だ!異なるタイプだがどっちもかっこいいことには変わりない。侍女さんたちも見とれているみたいだしこれはこっちの世界でも美形と称される方たちなのだろう。
「セスから聞いた。サヤ・ナツイといったか?」
そんな侍女さんたちを手をあげただけで下がらせ、殿下から声がかかる。
「はい。」
「どこから来た?お前はどこの出身だ。」
わかってはいたけどそうなるよね。ここは一国の王城。身元のわからない者をそのまま受け入れてくれることなんてない。
異世界からきた。ということは通じないよね。
咲夜はどう答えていいのかわからず黙った。殿下の射るような視線がほんと痛い。
「その子がはなしの子?」
ピリピリと張り詰めた空気の中、響いたのは少年のような声だった。
咲夜が振り向くとすぐそばに男が立っていて驚く。咲夜をみると彼はわずかに微笑んだ。
咲夜はあまり変わらない身長、顔立ちをみると少年に見える14,15歳ぐらい?
「僕はユファン・バークリー。一応魔法使いなんてことをしているんだ。
さて、貴方は?なんていうの?」
少年は人好きする笑みを浮かべて咲夜に向かって名乗り、手を差し伸べる。
なんだか殿下とかセスさんとかまるで無視状態だ。
いろいろと急な展開で私ついていけないんですが。