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第五話

「出たかったんだろう。早く出て来い。」


赤眼の男の声にはじかれるように咲夜は立ち上がったが、日ごろの栄養失調と牢獄逃亡に精を費やしていたため足元がふらつき、まともに歩くことが出来なかった。


頭がくらくらする。


「大丈夫ですか?」

美形さんは咲夜のところまでやってくるとその細身の身体に似合わない力でぐいっと持ち上げられた。

美形さんの力を借りてなんとか立つことができた咲夜に美形さんが羽織っていたローブをそのまま着せられる。そして後ろのフードをぐいっとかぶせられた。


「ちょっと失礼。」

その声とともに咲夜の視界が急に変わる。


「えっ?えっ?ちょっとっ!!」

いつの間にか咲夜は美形さんに横抱きにされていた。

咲夜の人生においてお姫様だっこをされるのは物心ついてからは初めてだ。しかもその相手がジャニーズ系の美形さんなのだから否応にもドキドキしてしまう。

そんな咲夜の気持ちを察する様子もなく、美形さんはすたすたと赤眼の男の後を追う。

「出来るだけフードを深くかぶって。顔は伏せていてください。」

そういうと美形さんはさらにフードを深くしようと引っ張る。

そうされてしまうと咲夜にはほとんど何にも見えなかった。


閉ざされた世界で咲夜にわかったことは、こげるような匂いや遠くから男達の怒号が飛び交っていることぐらいだった。周囲がどんな状況にあるのかはわからない。ただ美形さんは一度もペースを変えることなく淡々と歩いていく。

規則正しい揺れを感じながら咲夜は瞳を閉じる。そしてそのまま意識を失ってしまった。





大きく身体が揺れた衝撃に咲夜は目を覚ました。ゆっくりと身体を起こす。どうやら馬車みたいのに乗っているようだ。頭痛に顔をしかめていると目の前に美形さんが座っていることに気付いた。

「あの・・・。」

咲夜が美形さんに声をかけようとするとほのかに冷たい冷気が咲夜の顔を撫でた。思わず冷気がした方へ顔を向けると小さな窓がある。そっと外をのぞくともう夜になろうとしているところだった。周囲に大きな建物は見当たらず、とても静寂な空気が流れていた。空を見上げると無数の星が見える。その空を見ていると咲夜は涙が溢れてきそうになった。空は日本にいた頃と何にも変わりなかった。


「もう少しでディアリスの国境です。そうすればあと3日ほどで城に到着しますから。」

美形さんの言葉に咲夜は振り返る。


「あの・・・。どうして私はディアリスというところに連れて行かれるんですか?」

なんだか流されるままについてきてしまった咲夜だがふと自分の置かれた状況を思い出す。あの時は正常な思考回路でなかったと自分でもわかっている。だから何の疑問も感じなかったが今思えば不審な点満載だ。


「詳しい話は城に行ってからにしましょう。殿下から説明があるでしょうから。」

「殿下?」

「貴方を牢獄から出した方ですよ。フラウレイズ・イーゼルク・ディアリス殿下。ディアリス国の王弟殿下です。」

王様の弟・・・。ますます異世界。ますますやっかいな感じなんじゃないだろうか。これで甘い雰囲気なんかがあればウハウハなのかもしれないけれど一切その要素は見出せない。


とりあえず、この世界のことは何も知らないし、あの牢獄で餓死するより、誰もいない土地に置き去りにされるより、この人たちについていったほうが良い方向に向かう気がする。・・・向かうと信じて頑張ろう。

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