第二十四話
「なんで俺がそんな面倒な女を預からねばならんのだ?」
開口1番そんなこと言われたものだから咲夜はフリーズしてしまった。
テンション上がった咲夜の勢いに押されるようにユファンが連れてきてくれたのは軍用医務室。
咲夜はてっきり自分をみてくれた医師のオーゼンがいるものと思っていたが扉を開けたのは体格のいい無精髭を生やした男だった。
扉を開けて咲夜たちを見るなりしかめっ面をしたが、無言ながらも話を聞いてくれた。軍用医務室は人手が足りないらしくて猫の手も借りたい状況だとユファンから聞いていたので話を受け入れてもらえるんじゃないかと思っていた。ところがどっこい、彼から出た返事は“否”だった。
思わずユファンを見ると、答えを予想していたように頬杖ついてため息をついている。おいっ!!
「ここはお姫さんの遊び場じゃない」
「遊び場なんて思ってません」
まるで子供扱いのその言い草に思わず咲夜も食って掛かる。
「咲夜は元いた世界で医師の助手をしてたみたいだから全く素人ってわけではないよ?」
ユファンのフォローにも彼の表情は変わらない。
「お前は戦地に行ったことがあるのか?」
「いえ・・・。」
「戦争による負傷者を診たことは?」
「ありません・・・。」
「医師の助手ならオーゼン殿に頼べばよい。俺はごめんだ。」
ため息をつきながら立ち上がると、扉を開けられる。
“どうぞお帰りを”ってことですねー。
ユファンに促されるように部屋を出るとこれみよがしに音を立てて扉を閉められた。
いったいなんなのっ?!?!
「まぁ断られるとは思ってたけどねー。」
ユファンののほほーんとした言葉に思わず力が抜ける。思わずじとっとした目でユファンを見ると首をすくめられた。
「彼はゼルク・ノーグ殿 軍全体の医療を担っている医師だよ。オーゼン殿は王室専用の医師だからお互い管轄が違うんだ。実際の医療を見るならノーグ殿に任せた方がいいかなと思ったんだけどね。まぁ従軍医師は危険が伴うから簡単に引き受けてくれるとは思ってなかったよ。」
彼は厳しい人だしねー。っとユファンは言った。
なんだかせっかく道が開けたと思ったのに出鼻をくじかれた感じだ。
思わずため息をつくとユファンにポンポンと頭を撫でられた。ゼルク・ノーグという医師にも子供扱いされ、本当の年齢を知っているユファンにも子供扱いされ・・・。
なんだか咲夜は情けなく感じて、別の意味でもため息がつきたくなってきた。
長らくお休みを頂いていました。
少しスランプに陥ってしまい、放置してしまいました。
今更読んでいただける方がいらっしゃるかわかりませんが、ゆっくりと再開したいと思っています。
また本作品の序章にて地震にまつわる記載があります。東日本大震災の被災者の方の中にはご不快に思われる方もいらっしゃるかと思いますが、1年ほど前より書き始めた話であり、このような震災が起こるとは夢にも思っておりませんでした。その点をなにとぞご理解いただき、そのまま記載させていただきますことをご容赦いただきたいと思います。
よろしくお願いいたします。被災された方々が一日も早く平穏な日常を取り戻せますように。