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第二十三話

セスに報告を受けたフラウレイズ殿下は急いで地下牢を目指した。


そこには医師のオーゼンがすでに来ており、殿下に向かって首を振った。

「死因は何だ?」

牢に入れる時、毒物を持っていないか徹底的に調べた。舌を噛み切られぬように口枷もしていたのだ。

「おそらく自害ではありませぬ。心臓発作ですな。もとより持病があったのではないでしょうか?」

「持病をもつ娘を使ったか。」

殿下のつぶやくように吐き出された言葉にオーゼンは娘を見る。

「詳しいことはこれから調べないとわかりませぬ。しかし殿下の推察通りならばなかなか用意周到ですな。」

普通、スパイや暗殺実行者には捕まったときに自害できるよう毒物を持たせる。しかしそれは裏返して言えば裏で暗躍する者がいることを裏付けることとなり、娘の犯行理由と相反することだ。

しかし何ももたせなければ娘が自白することもありえる。だが持病を持つ娘ならば自然死が期待できる。ましてなんの訓練も受けていない素人の娘ならば牢での拘束された生活に耐えることは厳しい。

「まぁ。元より大した情報は与えられていなかっただろうがな。」

すでに娘は拘束を解かれ、今は安らかな顔をしている。

白い肌、栗色の髪、閉じられた瞳は翠色だった気がする。ディアリスでは決して珍しくないその容姿。そして心の病の持病を持つ娘。利用するには格好の標的であろう。


「詳しい結果を待っている。」

オーゼンにそれだけ伝えると殿下はきびすを返した。




咲夜はあれからみるみるうちに回復した。

最初の1週間はベッド上安静を余儀なくされたが、2週間もすれば動きたくてうずうずしてくる。

身の回りのことを自分でしようとしてクリスティアから雷が落とされることが日常茶飯事になっていた。

ラチュアはほぼ毎日見舞いにきてくれ、一生懸命話をしてくれる。はじめは長く声帯を使っていなかったせいでか細くかすれた声しかでなかったが徐々に張りを取り戻し、愛らしい容姿に伴う声で話が出来るようになっていた。

ユファンも回復魔法をかけてくれるため2,3日に1回は様子を見に来てくれた。

回復魔法をかけながら、なぜか採血なんかも時折採ってもっていっていた。


「昨日オーゼンさんが採ってったけど?」

今日も採血道具を持って現れたユファンに咲夜は顔をしかめる。

針も血も苦手ではないがさすがに避けられるならば避けたいと思うもの。

「オーゼンが採っていったのは君の健康状態を知るためのものだろ?僕がほしい結果とは違うんだよ。」

咲夜の意見は無視し、さっさと準備をするユファン。

「ほしい結果って?」

おとなしく腕を差し出しながらユファンに尋ねると、まじめな顔をしてユファンが咲夜を見た。

「殿下からも聞いたと思うけど、致死量の3倍もの毒を盛られたんだ。君は神獣の加護を受けているし、その影響か他の精霊からも好かれていることはわかってる。でも今まではその神獣の特出した加護が見えなかった。だけど今、普通なら死んでいておかしくない状況で君はこうして生きている。

つまり僕は君を守護する神獣が治癒能力に長けてるんじゃないかなって思ってるんだ。」

「治癒能力・・・。」


考えもしなかったけど確かに致死量3倍の毒を飲んで死んでないってありえない話だ。

「だからどれくらい僕のかけた回復魔法が君の身体に作用しているか知りたいんだよ。」

だから回復魔法をかける前後で採血したんだ。話しながらも手際よくユファンは採血を採っていく。

「ねぇねぇ。その治癒能力って自分にしか効かないのかな?」

「どういう意味?」

咲夜の質問にユファンが顔を上げる。

「その治癒能力がほんとに私にあったとして、それって自分に作用するだけなのかなって!ユファンが私に回復魔法をかけてくれているように私にも他の人の病気や怪我を治せたりしないのかなって!」

「さあ。。。そればっかりは実際にやってみなくちゃわかんないけど。」

「今思えば、そういう勉強ってやってなかったよね!怪我したり病気したりする人がまわりにいなかったし・・・。私、ここに来る前は看護師だったんだよ!」

興奮する咲夜の態度にユファンは困惑している。

でも今まで周りの激流に流されている感がどうしても否めなかった咲夜にとってそれは未来を切り開く明るい光のように感じられていた。


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